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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第31章 "壊"
御来光を無心に眺めている総司からそっと離れて、瑠衣は社の祭壇の上の飾りを手に取った。
光にかざし、力が入ったか確認する。
(流石に汚れの無い聖域だな、綺麗に力が入っている)
徐に歯で指先を切り、血を一滴石に落とす。
「"我願う…石よ…持ち主に守護を…危険を避け…身を守り…我の代わりを勤めよ…"」
此が総司に出来る最後の事…
自分の代わりに、この根付けが総司をあらゆる事から守ってくれる。
(お願いだから総司を守って、後は託します…)
根付けを持ち、まだ御来光を見ている総司の側に立つ。
「つい見入ってしまいました…」
「分かります、不思議な感じですからね、本当ならば空でも飛んで景色でも見せてあげたいです」
「そんな事も出来るのですか??」
「今は無理ですね…
そうですね、何時か機会があったら…」
「約束ですよ?」
「クスッ…
約束ね………」
自分が約束は守るのを、知って言っているのは分かっている、出来るなら守ってあげたい。
「そう……
これ、お返しします…
絶対肌身離さず持っていて下さい、自分からのお願いです」
瑠衣は総司の手に根付けを乗せる。
「ご利益あるんですよね?」
「凄いご利益ありますよ」
笑いながらも、根付けを帯に付ける総司…
身に付けていれば、そう簡単に殺られる事は無い。
「絶対に無くさないで下さい…
では、そろそろ戻りましょうか、余りもたもたしていると、誰かが起こしに来るかも知れませんから」
そう言って総司に手を出す。
「えぇ…
凄い物を見せて貰いました、瑠衣に感謝ですね」
差し出された手を握る。
「では行きます」
二人は富士の山から消えた。
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