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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第33章 "乱"
瑠衣は布団から抜け出し、縁側に座って見た。
(本当に、空の結界陣が無くなった…)
瑠衣の目にも綺麗な青空が見える。
もう自分を縛る物は無い、後は記憶を操作し、記録を消して、"時渡り"をするのみ。
(後数日間‥か…)
名残惜しさたっぷり、未練たっぷり…
でも掟には逆らえ無い。
だから池田屋事件で最後にしようと思う。
宋永輪を倒した事で、歴史は正常に動き始めた。
本当は自分が居ても居なくても関係ない…
今回はただの自己満足、総司を助けたいだけ。
(我が儘になったな自分も…)
庭の散った桜の木を見て、瑠衣は笑いながらそう思った。
その後、きちんと話を聞いて今日が六月二日だと分かる。
後三日後に控えている一大事件に気付いているのは勿論瑠衣のみ。
土方達も、衝突があるだろうとは踏んでいるだろうが、あの展開は予想はしていない筈。
(今日は‥とりあえず大人しくして、後二日で鈍った体を解しておくしかない)
向こうには‥あの吉田稔麿がいる…
幾らあの後、総司が腕を上げたからと言って、まだ吉田と互角、それくらい吉田は強い。
それに吉田は槍の使い手だった筈、部屋から出せば此方側が不利な事に…。
だから・・・・・
「なに起きてるのですか?」
報告が終わり戻って来た総司に、上から睨まれしまう。
「た‥ただ座っていただけです、少しは日に当たりたいと…」
「全く…
目が覚めると、何時もそれですねぇ…」
仕方が無いという顔で、総司は瑠衣の隣に腰を下ろす。
「ぁはは…
自分そんなに変な事していましたっけ…」
「私を心配させる程度にはしていましたよ」
「はぁ…
すみません、反省します…………」
何となく心当たりがあるので、返す言葉が見付からない。
「この一年近く‥色々ありましたからね…
怪我するは倒れるは自分でも驚きですよ……
まぁ、その分楽しい事もありましたが」
「・・・そうですね」
総司も分かっている、宋永輪を倒した事で瑠衣が自由になった事を…
もう瑠衣を縛る鎖は無い、多分近いうちに飛び立って行って仕舞うのだろう。
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