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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第2章 "神"
はっきり言ってこの"儀式"は好きではない
ただ男(もしくは女)に身を預けるだけ、儀式化した交わりは朱雀に何の感情ももたらさない
式たりに沿った‥紙に書いたような行為の繰り返し、全てが儀式の為に作られた教典をなぞっているようなもの‥
分かっている、其れが必要な事も朱雀にしか出来ない事だという事も…
「主上・・・」
「なんじゃ優衣」
不安そうに此方を見つめている優衣
筆頭女官と言うが、朱雀とは代を継ぐ前から唯一仕えていた女官だ、このほぼ無表情の顔色から少しでも感情を読み取ろうとしているのは百も承知
それが出来るのは優衣ただ1人、やはり長と一緒に居るせいか唯一朱雀の感情を読む…
世間‥いや、この外宮の中でも感情表現が殆ど無い朱雀の腹のうちを知る者は少ない
神としてなのか、朱雀としてなのか、それとも一族の長としてなのか、感情というモノが表に出る事は殆ど無きに等しい
礼儀上外宮から出、外の外交となればそれらしき感情を顔に貼り付ける事は出来るが本位では無いのは確か、ただの社交辞令それだけだ
「・・・やはりお顔色が多少優れないと・・・
夜に"儀式"の用意を致しまする」
「・・・・・・・」
優衣はどうしても"儀式"をさせたいらしい
確かにあの式典は常より力を使う、年に一度の事だ仕方が無いと言えば仕方が無い
「御夕食と湯浴みの後に・・・
御前暫く失礼致します主上」
優雅に一礼し居室を退室してゆく優衣を後目に捉えながらも良き返答はしない、返答した所でどうにもなる訳が無いと分かっているからだ。
「・・・・・我は御飾りだからのぅ・・・」
朱雀一族と言うが実際政治を取り仕切っているのは一族の高官達、神である朱雀が口を挟めば大事になるのは必死
強大な力がある分影響力も大きいのは自然の理、だからこそ人の営みである政治や経済にはほぼ口を挟まない、ただ毎日の御前会議の中央で座っている‥人形のように…
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