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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第33章 "乱"
「ふぅ…
毎回驚きますね」
ワザと毎回と言う言葉を瑠衣に返してやる。
「総司、そういうのを揚げ足取りと言いますよ」
瑠衣は座り、酒瓶の蓋を外す。
そして無言で総司に湯のみを渡した。
総司も座り、湯のみを受け取る。
瑠衣に並々酒を注がれ、そっと一口飲む。
「おや?
何時も組で買う酒と違いますね」
「えぇ、前に気に入ったのがあったので、買って置いて山南さんに預かって貰ってました」
大晦日買い出しに行った時の話、もう半年近く前になる。
「へー
本当に美味しいです」
「それは良かったです」
自分の湯のみにも酒を注ぎ、チビっと口を付ける。
「うん、味は変わっていませんね、やはり美味しい」
空を見上げれば満天の星空、やっと見えるようになった空に満足しながら、二人の酒は進む。
六月四日ー
朝の巡察も終わり、自室で休む二人。
「自分、少し屯所内歩いて来ます」
「珍しいですね?」
今日の報告書を書きながら、総司は不思議な顔をする。
「部屋に居ても暑いだけですので、風に当たりに行くの方が本音ですけど…」
「確かに暑いですからねぇー」
今日は座っているだけでも汗をかく暑さ、だったら動いた方が良いという所。
「では……」
開けっ放しの障子から手を出して、行って来ますと手を振り廊下へ…
本当は…
ただ皆の顔が見たかっただけ。
先ずは書物を返すのと、お見舞いを兼ねて山南の部屋に向かう。
「山南さん…」
どの部屋も開けっ放しなので、障子の端から山南の部屋を覗く。
「おや橘君」
「お加減如何ですか?」
中に入り、布団に寝ている山南の横に座った。
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