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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第33章 "乱"
瑠衣は終わったとばかりに立ち上がる。
「橘君、今度暇がある時に埋め合わせするからね」
「クスッ…
良いですよ、ただのお手伝いですし‥では局長失礼します」
「うん、けど埋め合わせは忘れないように…」
その言葉に優しく笑い、瑠衣は近藤の部屋から出て、また廊下を歩く。
(みんな良い人達なんだよね…
未練が残る程……)
暑い日差しの太陽を眺め、新撰組の人達を思い出す。
人斬り集団と言われていても心まで鬼では無い、かえって京の街の人より人間味溢れ、己の目指すものに向かって毎日充実した生活を送っている。
意外な近藤の書類整理に時間を取られ、気が付けばもう夕方、瑠衣はそのまま大広間に向かう。
(まだ少し早いけど、自室に戻ってもう一度来るのも手間だし‥良いか)
大広間に入ると、腹減り三馬鹿…もとい…原田・藤堂・永倉が勝負事をしている。
「…何してるんですか??」
瑠衣は藤堂の後ろから中を覗く(藤堂の後ろが一番見やすいからは内緒)。
茶碗と賽子二つ…
「チンチロリン…ですか…………
で、なにを賭けてですか??」
金子を賭けると法度に触れるため、皆今日のおかずや春画、外での奢りなどを賭けている。
「瑠衣…
待て待て、今良いところなんだぜ…」
原田が賽子を持ち、茶碗に放り込む…
"カン…カラカラカラ…"
「瑠衣ー
左之と新ぱっちゃんが、今夜のおかずを賭けてるんだよ」
「なる程…」
藤堂の横に座り勝負の成り行きを見守る事に…
「どうだ新八…」
勝ち誇った原田。
「まだ一回残っている」
永倉は茶碗から賽子を取り出し、真剣な表情で賽子を茶碗に放り込む。
"カン…カン…カラカラカラカラ…"
二人共茶碗の中の賽子に注目………
「「あっ!!」」
思わず瑠衣と藤堂は声を上げてしまった。
「悪いな左之、俺の勝ちだ…
おかずは貰ったぞ」
「くぅー
くそぉーー!!」
どうやら勝負は永倉の勝ちで終わったようで、原田は‥へこんでいる。
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