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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第33章 "乱"
といっても、瑠衣は着流しから羽織り袴に変えるくらいで特になにも無い。
「軽装でいいのですか?」
「せめて鉢鉦と手甲くらいですね…
後は重くなるんで…
これで十分です」
「そうですか、瑠衣ならば大丈夫なのでしょうね」
総司は着物の下に鎖帷子を着込んでいる。
鉢鉦と手甲は懐に、隊服は小さくたたんで見えない場所に隠す。
大刀と脇差しを差し準備が完了する。
総司の方も終わったようだ。
「行きますよ瑠衣」
「総司先に行っていてください、後で追いつきます」
「分かりました。」
総司は先に屯所から出て行く。
(此が新撰組最後の戦い…)
((華因…))
打ち合わせ通りに、華因が姿を表した。
「・・・・・」
そして光に変わり、瑠衣の中に入って行く。
更に押入から箱を出す…
符で封印し、訴状を上に載せて外宮に転移させる、これで準備は万端。
「寂しくなるな……」
複雑な心境で、もう一度部屋を見回してから、瑠衣も屯所を出た。
「待って下さーい」
壬生のあぜ道に瑠衣の声が響く。
「おや、橘さんもう良いのですか?」
総司は立ち止まって瑠衣を待ち、追いついた後一緒に歩き出す。
「はい、野暮用でしたので、しかし今日も熱帯夜になりそうですね…」
「そうですね…
こう毎日暑いと嫌になりますねぇー」
もう数日雨は降っていない、毎日照りつける太陽に苛々も募る。
「此処のところ毎日ですから…
流石に自分も嫌ですよ…
此でも本来は北国に住んでいるんで余計にです」
「おや、初耳ですね…
北国ですか…
どうせなら蝦夷に行ってみたいですね…」
「……
先生には無理かと…
蝦夷の冬は厳しいですよ」
「そうなのですか?
けど住んでいる人は居ますよね?」
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