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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第33章 "乱"


土方は中に居る隊士達を見回し、素早く組み分けを考える。


「皆良く聞け!!
隊を二つに分ける…
近藤さんが率いる隊と俺が率いる隊、此は敵の潜みそうな場所が四国屋、池田屋辺りの宿屋・料亭が怪しいと睨んでるからだ!」

土方の言葉を一言一句聞き漏らさないように、隊士達は沈黙し土方に注目している。


「まず、近藤さん率いる隊には総司、永倉、藤堂、橘、武田、谷兄弟‥十名の精鋭で行く…
残り二十四名は俺と四国屋の方を回る……
俺は四国屋の方が怪しいと睨んでるいる故この振り分けだ、良いな敵を一人も逃すな、全て斬り殺す気で全力をかけろ!!」


「「「お―――!!」」」


隊士達の気合いが最高峰に達する…
この機会を逃す手は無い。

近藤は立ち上がり、周り全てを見回した。


「此は訓練では無い、本物の死闘だ!
皆の者、気合い新たに敵を全て滅するぞ…
出陣だー!!」

近藤を先頭に祇園会所を出る新撰組隊士達、浅葱のダンダラを翻し、颯爽と京の街を駆け抜ける。




途中近藤・土方隊はそれぞれに別れる。


「歳、頼んだぞ」

「近藤さんこそ、良い所此方に取られて泣くなよ」

「ははは…
その時は歳に譲るさ」


「新八、平助、俺がいねぇからって美味しい所取るなよな」

「それは左之お前だ…」

「そうだよ左之任せてよ」

原田達も交わす言葉は逞しい。




「総司、橘、近藤さんを頼む」

「分かってますよ斎藤さん」

総司の言葉に瑠衣も頷く。


「皆行くぞ!!」

土方隊が先に四国屋方面に向けて出発。

それを近藤は見届け、此方に振り向く。


「我々も行くぞ!!」

近藤隊は池田屋方面に向けて歩き出した。





今日も夜が暑い…
立て続く熱帯夜‥その中を近藤率いる十名の精鋭隊士は旅籠・料亭と一軒一軒虱潰しに捜索する。


「此処も外れか…」

もう何軒目だろうか、流石に隊士達の苛々は募る。


「土方さん達の方が当たりだったか?」

永倉が一言漏らす。


「まだ分かりませんよ、敵も裏をかいて来るでしょうから、私ならばそうしますね…」

総司は冷静に、この状況を判断している。

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