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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第33章 "乱"
瑠衣は既に吉田の隣にいる。
「な‥貴様…」
普通ならば、一撃で仕留めるが、総司が殺ったように見せかけなければならない。
「お前が我に適う訳が無い‥ではな……」
"トンッ"
一旦後方に下がり、足音一つ‥三段突きを繰り出す!
『ズシャ…ズシャ…ズシャ…』
喉元・心の蔵・眉間…
三段突きのお手本のように刀を振るう。
「く…ぁ…」
呆気なく、吉田はその場に倒れ命を落とした。
「…此で良し……」
此で、吉田は総司が仕留めたと誰もが思うだろう。
自分の出番は、総司の代わり‥ただそれだけ…
瑠衣は総司の腕を取り、自分の肩に掛けて、総司をなんとか引きずり元来た部屋を歩く。
廊下より、此方の方が歩きやすいと踏んだから…
実際廊下は、足の踏み場も無い程浪士の躯と血が充満している。
瑠衣が階段先に出て来るのと、土方隊が到着するのが同時に重なった。
土方は素早く総司と瑠衣を見付け、階段を駆け上る。
「橘!!」
瑠衣に担がれてる総司…
ぐったりとして、生きてるのか死んでるのか分からない。
「…橘‥まさ………」
「冗談言わないで下さいっ!!」
土方の言葉を遮る瑠衣。
「生きてますよ、しかし早く治療しないと不味いです!!」
土方はその言葉に一瞬ほっとするが、早いところ外に連れ出さなければならない。
「橘、手を貸す」
もう片方の腕を担ぎ上げ、瑠衣と土方は階段を下りる。
一階はまだ小競り合いが続いているが、その隙をかい潜り上手く池田屋の外に出れた。
「兎に角、大量の水を用意して下さい!!」
戸板に総司を寝かせ、手の空いている平隊士に、井戸を探させ水を持って来させる。
「副長は、まだやる事があるでしょう!!」
「あ‥あぁ…
総司を頼むぞ」
瑠衣の言葉に我に返り、土方は池田屋の中へ戻って行った。
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