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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第33章 "乱"
「熱‥ですか?」
そう言われば体が怠い…
多分、熱のせいなのだろう。
瑠衣は、隊士を一人呼んだ。
「少しずつ先生に水を飲ませて下さい…
それと熱がありますから、何か冷やすものを…」
「はいっ!!」
隊士は直ぐに、手拭いを探しに走り出し出す。
その間に、瑠衣は水の入った桶を二つ用意し、その一つに塩と砂糖を入れる。
隊士が、手拭いを抱えて戻って来た。
「水は此方の桶の水を飲ませて下さい、もう一つは体を冷やすのに…」
「分かりました」
瑠衣は鉢鉦を巻き直す。
「橘さん…
あなたは??」
「まだやる事があります、自分一人だけ抜け出す訳にはいきません…
先生の事は副長に報告済です、では……」
「橘さん!!」
総司は瑠衣を呼び止める、自分ばかりがこんな状態だなんて…
まだ、近藤さん達は戦っている筈‥なのに……
「何ですか?」
「私も‥戦います……」
"パシンッ!!"
総司その言葉に、瑠衣の平手打ちが総司を襲う。
「良いですか先生、今動いたら確実に死にますよ…
それを局長、副長は喜びますか?」
「…それは……」
瑠衣は、何時に無くキツい言い方で、総司を突き放した。
そうでもしないと、総司は言う事を聞かない、そう知っているから……
「でしたら、此処で安静にしてて下さい!
下手に動かれたら迷惑です!!」
「・・・
分かりました…」
「では‥自分はこれで……」
刀を差し直し、池田屋に入って行く瑠衣。
本当は総司も分かっている…
自分の為にあんな事を言ったのを……
瑠衣は何時も、自分の事を優先的に考える。
(瑠衣‥御武運を…)
総司はただ祈るしか無かった。
池田屋の中は、血と死体とで普通の人ならば、目をそらしたくなる状況の中にある。
戦闘は既に終わったらしく、隊士達が生きている浪士に縄を打っている最中。
「橘・・・」
一段落付いた土方が、瑠衣を呼んでいる。
「はい副長」
「総司はどうだ?」
「安静にしていれば大丈夫です…」
「そうか……」
本当は礼を言いたいが、他の隊士の手前それも出来ない。
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