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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第33章 "乱"


今は本当に感情が素直に出るようになった…
それも全て総司のお陰。

瑠衣は懐から、桜の簪を取り出した。


"シャラン…シャラン…"


花びらの部分が擦れる音が、耳に心地良い。

身に付ける事は無かったけど、大切な思い出の品。

総司を愛した事に後悔は一切無いし、多分此からもずっと自分の心は総司のみだろう。

それはそれで良いと思う……

元々、一生婚姻とは無関係な自分、心の中くらい一生愛している人がいたって、誰にも文句は言わせない。


「見納めかなぁ…
それとも、また見れる事があるのかな?」

何時の間にか気に入ってる京の街…
この後、決して良いことばかりでは無いけれど、心は多分変わらないと思う。


「現代に戻ったら、やはり京に行ってみたいな…」

抜け出す方法なんて幾らでもある。

一度、普通の観光というものをやってみたい。


"シャラン…シャラン…"


風に簪の音が響く…

総司との事も、きっちり決着を付けなければならない。

自分と違って、総司にはまだ選択肢が残っている。


「掟は掟…
自分の自由にはならない……
だから‥総司は自分の手で封印してしまおう…
願わくば幸せな人生を………」

泣きそうになるのを空を見て我慢し、朝が来るまで瑠衣は櫓の上で過ごした。







明け方ー



捜索隊は、それぞれに池田屋に戻って来た。

瑠衣もさり気なく戻って来ている。

総司も起き上がれるまで回復し、瑠衣の側にやって来た。


「お疲れ様‥橘さん…」

「先生…
もう大丈夫なんですか??」

「えぇ…
あの後、近藤さんが医者を呼びましてね、処置が早かったから助かったと…
今もう熱も殆ど下がっていますよ…
橘さんのお陰ですね」

「自分なんて微々たるものですよ、先生の生きる意志があったからです」

瑠衣は少しだけ笑う。


「それでも…
橘さんのお陰です…」

瑠衣が居なければ、生きる意志なんて余り無い。

だから、やはり瑠衣のお陰だと思う。


「其処まで言われると、調子に乗りますよ-?」

瑠衣は笑って総司をからかう、長かった一日の終わり…

新撰組最大の捕り物、池田屋事件も終わり…
後は屯所に帰るだけ……
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