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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第8章 "常"



(さて、これからどうするかな…)


なにせ初めての非番である(入隊した次の日が非番だった為、本格的な非番は初)

総司は屯所内には居なそうだし、原田達は昼餉中、源さんや島田さんは夕餉作りに忙しく、平隊士達は巡察に稽古にと勤しんでる。


(…あっ!!)


一人居た…。


(山南副長が確か書物を貸してくれるって言ってたな‥)


今日は山南は屯所内で仕事をしてるはず、ちょっと書物を借りに行こうかと思い、幹部棟の奥へと歩き出した。


「山南副長、橘です
よろしいですか?」

幹部棟の一番奥にある山南の部屋の前に瑠衣は来ている…
中から気配は一つ、勿論山南だろう。

「橘君かい、構わないよ入っておいで…」

部屋の中から山南の穏やかな声が聞こえる…

「失礼します」

声を掛け中に入る瑠衣、そこには文机に座り仕事をしている山南が此方を向いている。

文机に箪笥くらいしか無い殺風景な部屋なのだが、奥には大量の書物が高くそびえ立っているのが異様に目立つ。


「山南副長、書物をお借りしようと思い……」

「あ、橘君」

話は山南の一言により遮られた。

「何でしょうか?」

「その…山南副長って堅苦しい呼び名はどうも苦手で…
普通に山南かサンナンと呼んで頂けませんか?」

首筋をポリポリと照れくさそうかきながら、山南はそう言って来る。

「……分かりました、では山南さんで良いですか?
とにかく書物を借りに来ました」

「はい、」

"山南さん" でやっと納得したのか、山南は奥の書物の山に入っていく。


「どの様なのが良いのですかねぇー
物語、巻物、薬学から武学、漢詩とかもありますが…」

「…では薬学と武学辺りで‥」

そう言うと山南は堆い山の中から数十冊の書物を取り出し瑠衣の前に広げた。

「この中に好きなのがありますか?」

「少々拝見します」

瑠衣は一冊一冊パラパラと見ていく…
その中で気になった三冊を手に取る。

「これをお借り出来ますか?」

「…はい、構いませんよ…
返すのは何時でも良いですからね」

「ありがとう御座います
ではお借りしていきます」

山南から借りた三冊の書物を持ち、瑠衣は部屋から出て行った。
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