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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第8章 "常"
(…毒草本に暗殺術、後は流派の分からない武術本ですか…
中々とんでもないものを選びますねぇ‥)
文机の前に座り直し、瑠衣が出て行った障子を見て溜め息を吐く。
「土方君が見たら何と言うのですかね…」
一人考えにふける山南。
「まぁ、私が考えても仕方ない事ですかねぇー」
どうせ土方に言った所で、この程度の事では相手にしないだろう…
それは理解している哀しいながら…
実務は土方、自分はそれに口を挟む程度、それで今の所は成り立っている。
余計な考えを心中に留め、山南は今度こそ文机に向かい仕事を再開した。
瑠衣は自室に戻り、山南から借りた書物を開く。
(…自分の時代では絶滅している草や木がある、覚えおかなければ命とりになりかねない毒も多々存在する…)
自分自身には毒や怪我はたいした事ではない…
毒は効きにくく抜けるのも早い、傷に関しても普通の人間の数倍以上の速さで回復する。
だが、知っておいて損は無い、案外その辺に生えている草や木だったりするのだ。
(自分の知らない知識…面白いな…)
まだまだあるんだろう
自分の知識なぞたかが知れてる、幾ら神様だって知らんものは知らん、廃れてしまった知識までは受け継がない。
「・・・・・・・・・自分何でこんなに此処に肩入れしてるんだ??」
ふとした疑問に自分自身可笑しくなる…
今までだって何度も"時渡り"を使い過去に来ている。
ただ力ある者を見つけ、その力を少し分けて貰う。
(方便だな…頂いて来るの間違いか…)
だが、必要以上に他の人間に近付いたりする事は無かった筈…
なのに今回は仕方ないとは言え、新撰組全体に関わってしまっている。
(普通なら契約上、沖田総司のみを相手に他の力のある者から力を頂いて、自分は極力人前に姿を表さない‥)
だが今の現状は新撰組隊士として皆に知れ渡り、隊務をこなして慣れない愛想笑いをし、完全に新撰組に溶け込んでいるように見せ掛けている。
(契約より当代様の策略か…)
こうしている間にも歴史は変わっていってる筈、変えた原因が自分にあるのならば、後で全てを元に戻さなくてはならない。
当代様とてそれは理解している筈なのに何故自分にこの様な事をさせるのか…
(当代様の意図は何処にある?)
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