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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第8章 "常"
当代様だとて姿変えは出来るし"鬼"を退治する事だって簡単に出来る筈なのだが…
自分でなくとも当代様が‥いや当代様が出向かなくても一族が姿変えをして新撰組に潜り込む事さえ出来るのに…
書物を一枚一枚捲りながら、瑠衣の心の中は不思議な違和感を感じていた。
「・・・ふぅーー」
書物を読みながら根を詰め過ぎるくらい余計な考えに没頭していたようだ
随分と自室で座りっ放しだなと思い、体を軽く動かそうと立ち上がろうとした‥のだが……
"クラッ・・・"
「・・・えっ!?」
強烈なふらつきと倦怠感が襲い、立つつもりだった筈が畳に両手を付いただけに終わった。
(・・・
不味いな‥本格的に力不足だ…)
この感覚は嫌なほど理解出来る、力不足の為の能力の低下‥内にある力ばかりか肉体にまで影響が出るのであれば危険な程度まで力が落ちている。
(幾ら華因が力を補給していても間に合わない…か……)
島原で華因が男から力を頂いても、同じだけ力を総司に渡していれば執全的に力は減る一方、大地が恵みを与えてくれないこの状況ならば入って来る力より出て行く力の方が大きい…
「困ったな・・・」
このままでは華因がある程度力を流してくれるまで眠ってしまうかも知れない、今この状況下でそれは一番不味い、やっと周りに馴れたばかりなのに急に不振に思われる行動は避けるべきだ。
(仕方が無い…
普通に歩くだけなら島原くらい大丈夫だろう)
屯所から島原まではかなり近い場所にある、今度は気を張ってゆっくりと立ち上がり大丈夫だと確信する
危険な程の力不足だとて余程大量に力を使わない限り直ぐ倒れたり眠ったりする訳では無い、では今のうちに何とかするのが得策だろう。
まだ日差し高い昼の中、密かに瑠衣は屯所を抜け出し島原へと向かった・・・
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