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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第9章 "急"
「そうか‥良い人材だからのぅ"鬼"には打ってつけだ」
「お呼びしますか?」
山南は静かに朱雀に進言してみる。
「頼む…」
了解とばかしに一礼し客間を出る山南…
((もしかして、橘を見たくて来た??))
近藤と土方は同じ考えをしてしまう…
朱雀様は呑気にお茶を啜っているが…
程なく山南が瑠衣を連れて戻って来た…
瑠衣は一番襖に近い所に座ってた土方の更に後ろに座る。
「お久しぶりで御座います朱雀様、その節はお力をお貸し頂きありがとう御座いました」
「うむ、橘元気そうだの」
「はい、毎日が充実しております」
「そうか…
それはなにより、紹介した我も松平も鼻が高かろうて…」
「ぁはは…
そうで御座いますね、会津公には感謝しております」
お互い社交辞令なのは承知の上、本当の事など口が裂けても言える訳が無い…
そこは当代様もしっかり口裏を合わせてくれる。
「橘は幼少の頃から朱雀様を知っているという話だったな」
土方がさり気なく爆弾を落として来る…
一応話を通しているし嘘はついていない‥が、今の当代様には知らない話…
さてどうしたものか…
「ははは…
小さい頃の橘か‥それはやんちゃだったぞ?」
さり気なく口裏を合わせてくれる当代様、この先合うのは少し考えれば分かる事。
代変わりの前の数年間先代と新しい当代とは修行と己が知識の移動も兼ねて一緒に生活するのが式たり…
当代様も同じ事をしている筈である。
「やんちゃとは…
朱雀様それは少し…自分はしっかりと修行しておりました…」
「そうだったかのぅ…」
ニヤリと笑う当代様…
もしかしたら自分に重ねているのかも知れない、腹の内は図りかねるが……
「はい、そうです」
「ではそう言う事にしておこうか…」
「朱雀様っ!!」
からかわれているのを自覚しながら、返す言葉がない…
大丈夫だとは思うが、下手な事を話して食い違いが出てしまっては困る。
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