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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第9章 "急"

総司と山崎は朱雀様が道場に入って暫く様子を見てから道場に近付いた。
『ガンッ…ガツ…ガン…』
道場の中から木刀の音が聞こえる…
こっそり近づき、壁の上の小窓から中を覗く。
気配が二つ、木刀の音も二つ、だが姿が見えない…いや、見えない程速いのだ!!
『ガツ!!…パンッ…ガガガガ…』
お互い連打で相手を攻撃するがどちらも受けるか交わしてしまう。
「やはり本気は面白いのう」
さも面白そうに言う当代様。
「冗談じゃありません!!
早くやられて下さい!!」
不服と負けずに言う瑠衣。
"神足"で移動し、互いの急所目掛けて突きを放つ・・・
だがどちらも急所には入らず長い間拮抗状態が続く。
始めてから一刻(2時間)は過ぎようとしていた…
それでもお互いの息の乱れは無いし、"神足"を止めるつもりも無い。
総司との試合の時と異なり、それなりに力の補給をしているからこそ出来る所業だ…
一刻の間"神足"を使い続けて止まる事を知らない二人…
外で見ている総司と山崎にしてみれば、時々話す声で朱雀様と瑠衣と理解出来るも、その姿を追う事が中々出来ない。
月明かりの中移動する影や気配がかろうじて見える程度で後は打ち合いの音が響くのみ。
(あぁ…
私、朱雀様はともかく橘さんにも手加減されてたのですねぇー)
今の二人の試合を見、初日瑠衣との手合わせを思い出す。
最後の方の記憶は相変わらず曖昧だが、あの時横腹と首に一撃入れたのが確実に瑠衣だと理解出来た(実はまだ半分は誰かが止めに入ったとも思っていた為)
(橘、朱雀様と互角かいな!?)
横で一緒に見ている山崎も驚きを隠せない…
だがそこは忍、気配はきちんと消しているが…。
(とんでもないがな…
わてらより速いでありゃぁ)
忍は速さが重要である。
だが、その山崎を持ってしても朱雀様と瑠衣を完全に追う事が出来ない。
((へこみます(がなぁ)ねぇ))
意気消沈の総司と山崎を尻目に朱雀と瑠衣の試合は更に続く・・・
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