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いじっぱりなシークレットムーン
第2章 Nostalgic Moon
28歳とは微妙なお年頃で、実力的には中堅からベテランの域に達していなければならない。
なにが"仕事が出来る"になるのかは、いまだわからないけれど、あたしはいかに顧客のニーズに応えられるのか、だと思っている。
かつてパソコンに関する何でも屋状態でいたあたしは、WEBに関すること全般が担当となった。いわゆるインターネットで見れる、パソコンやスマホのホームページに関するものだ。
あたしは一年前から主任として、デザイン課とシステム課の双方に指示して、営業部がとってきた仕事をとりまとめる立場にいる。
主任といえば偉そうだけど、木場に移ってから新たに設けられたWEB部担当になったものの、主任の下がヒラで、上がいないために、体裁のためにつけられた役職だろうと思っている。
「だけど、鹿沼主任。これだけで、絶対いけると思うっす! ほらこのピンク、このふわふわ感! 可愛らしい、まさにお嫁さんにしたいそんな女性のサイトっす。いいっす!いけるっす!」
目の前の部下、社会人二年目の木島武士は、尖らせた口をひん曲げているのに、主張を曲げない。
大学時代ラグビーをしていたらしく、童顔でムキムキの体格はミスマッチ。短く髪を刈っているその男らしい頭とは裏腹に、彼の趣向は乙女に偏りすぎている。
女性陣は別の案件にとりかかっているために、若者らしい発想が欲しくて、彼に「OLへの情報サイト」のイメージ案を頼んだのが悪かったのか。
自信満々の木島くんが見せたイメージ資料は、甘すぎる色合いとモチーフで、眠くなってきそうだ。
「ピンクとゆるふわ好きばかりが"女性"じゃないし、別に立ち上げるサイトは結婚情報ではなくて、"働く女性"がテーマ!! いい年してそんな甘ったるいピンクにふりふりを着たOLなんて、今時いないから!」
すると木島くんは、黙ってひとつの場所を指さした。
そこにいるのは、パソコンを見ている女性――、まさに甘ったるいピンクのふりふりのワンピを着て、縦巻き髪をピンクのリボンで留めた女性、三上杏奈がいた。
自称永遠の16歳だが、人事課の後輩に聞けば32歳だとか。
正直見た目は、十代にも思える。
「なになに~? アンナのことなに話してるの~?」
強烈な格好から予想を裏切らない舌っ足らずな言葉遣い。
ああ、絡まれたら面倒だ。