この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第2章 Nostalgic Moon
「杏奈ちゃんは可愛いなって、こいつが」
「え、俺そこまでは…」
木島くんが青ざめた。
「お嫁さん候補になっているみたいよ、こいつの」
「へえええ!?」
木島くんが変な声を出した。
「きゃ~!! 木島っち、でーとしようね~」
「主任、主任!!」
「じゃ、違う案もよろしく! おっと休憩時間だね、頭をクリアにしてかえってきてね、いってらっしゃい!」
「鹿沼ちゃん、いってきまーす!!」
「主任――っ!!」
杏奈が、幾多もの賞を総舐めにする凄腕プログラマーでなければ、絶対この会社……、否どこの会社にも居られないだろう。
会社は風紀より、益をとったらしい。
まあ確かに、彼女が作るものは素晴らしく、金になる。
前に彼女が作ったゲームの企画に参加したことがあったけれど、文句なしのものだった。
なぜあんな格好をしているか不明。
だれか、突っ込めよ……。
そう思うけれど、あたしも言い出せない人間のひとりだ。
***
同フロアにある休憩室は、半透明のガラスで出来たパーティーションに仕切られ、簡易テーブルと椅子、自販機が用意されている。その隣には、喫煙室まで用意されている。
「ああ、なんか疲れた。……きゃあ」
頬に冷たいものがあたってびっくりしていると、それは缶コーヒーを持った焦げ茶のスーツを着た結城だった。タバコの匂いがすることから、奴は喫煙所から出てすぐ缶コーヒーを買ったのか。
「ほら、やる。お前の怒鳴り声と、木島の悲鳴が聞こえていたぞ」
「ありがとう。木島くんが、ピンクのひらひらをWEBデザインにしてきたから。しかもその一点張り。代案を作ろうとしないから、思わず」
あたしはプルタブを引き上げて、カフェオレ珈琲を飲む。
あたしは普段ブラックだが、昔から興奮状態の時だけ、甘ったるい珈琲が落ち着くこと、この男はよく知っている。