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いじっぱりなシークレットムーン
第4章 Secret Crush Moon
 


「……鹿沼主任。本当のところはどうなんですか?」


 千絵ちゃんの目が細められる。


「結城課長とは、いつもただの同期って言ってますけれど……、結城課長が遊びだとしても、香月課長は?」

 遊びってなに?

 あたしの味方って言いながら、やはりあたしが二股かけているように思うの?


「香月課長とも遊びなんですか? それともこちらが本命?」


 コン!


 突然、強い硬質の音がして飛び上がれば、ノック1回でドア開けた衣里が立っていた。


「デザイン課、香月課長呼んでる」

「あ、真下さん。ありがとうございます!」


 堅い顔の衣里とは正反対に、千絵ちゃんはにこやかに出て行った。


「衣里……」


 泣きそうな目を向けると、衣里が微笑んでエナジードリンクをくれた。


「……またそれ」

「なに、これじゃ駄目?」

「いや、これで3缶目だから」


 2缶を指でさすと、衣里は朗らかに笑った。

 そして、真顔になってあたしに訊く。


「単刀直入に聞くけど、陽菜。あんた香月課長疑ってる?」


 それはあのメールを送った主のことを言っているのだろう。


「……衣里のところにも来たんだ。衣里はあの写真が本当なのか、あたしに訊かないの?」

「うん。あの写真が合成でも本物でも私は関係ない。私はあんたと結城が普通以上に仲良くて、香月課長とも昔なにかあったことくらいわかる。だけど陽菜が悪女で遊んでいるとか、絶対に思わない。理由があるんでしょ?」

「……っ」


 泣きそうになってくる。

 高校時代、悪意のざわめきからあたしを擁護してくれるひとはいなかった。いつもいつもあたしの弁解を必要としないところで、あたしは蔑まれていた。

 淫乱女、と――。


 衣里は違うというのなら、衣里の優しさに誠意で応えたい。


「……理由はある。それは……」


 発作のことを口にしようとしたあたしを、衣里の手が制した。


「あんたが言いたくなった時に言ってよ。今まで言わなかったのは、言えなかったからでしょ? 少しずつ、言える時に教えて。私だって秘密があるし、言える時に言うから。隠しているのはお互い様でしょう。それでも友達やってられるんだから、隠し事は二の次にしよ?」

「衣里~」


 衣里に抱きついたら、よしよしと頭を撫でてくれた。
 
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