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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon

苦痛は別世界のものだと、逃げようとするな。
溶け合い同化して、そのままを受け入れろ。
そんなところだろうか。
即ち――。
忍月財閥は別世界のものではない。
もっと身近なものと考え、拒絶や逃避ではなく融合する戦い方をしろ。
自分は嫌だと、拒否するだけではいけない?
もっと忍月のことも考えてやれ?
「茶道が禅宗と結びついているのは、この前お話した通り。茶道でも千利休が、この無寒暑の境地を謳っているの。"寒熱の地獄に通う茶柄杓も、心無ければ苦しみもなし"と」
無心であれ。
そして、相手に動じるな。
そう、言われたような気がした。
パンと彼女が大きな音を立てて、拍手をひとつした。
「はい、足を崩していいわ」
途端に訪れる足の痺れ。
「ぃ………っ」
触るのも辛い。
足が鉛のようだ。
「気が抜けると足の痺れを感じるものよ。忍月相手には、痺れを相手に悟らせない心頭滅却、無寒暑の境地を忘れないこと。はい、十五分間休憩」
あたし、杏奈、木島くんと、もがく三人。
ただひとり平然としている朱羽が、太股に手を置いて動けないあたしを見て、ちょんと指先で足の甲を突いた。
「駄目駄目駄目っ、そこは駄目――っ!!」
「鹿沼さん、なにその声。はしたないわよ」
「す、すみま……くぅぅぅぅぅっ」
あたしが思わず声を上げてしまうと、笑い声が響き渡った。
木島くんや杏奈も回復出来たというのに、あたしだけが立ち直れないって、一体なに!?
根性だけで生きていたこの鹿沼陽菜、軟弱な精神に涙!
負けない。
絶対、負けないったら!
痺れを感じながらも、あたしが意識していないだけで、朱羽に愛撫されて快感を感じるあたしの身体も、実はこれくらい強い刺激を得ているのではないだろうか……そんなことを考えてしまうと、真っ赤な顔で痺れに耐えることとなった。
……その後、さらなるスパルタ続きが、控えているとは知らずに。

