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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon

「名取川さんは、私の過去をお調べになりましたか?」
「……向島さんがなぜ出てきたのか、調べた時に」
「私は、彼と離れる方法を自らの意志で選び、シークレットムーンという家族を得て、別の幸せを感じてます。しかし鹿沼ちゃ……鹿沼さんは、別れずに愛するひとと一緒にいる選択をとりました。私が臆して取れなかった選択です」
杏奈……。
「私は、鹿沼さんを思いきり幸せにしてあげたい。私が出来なかった分、鹿沼さんには好きなひとと結ばれて欲しい。……環境という理不尽な理由で、引き裂いて終わりにしたくないです」
少しずつ、噛みしめるかのようにして杏奈は言った。
「過去で、別れる理由には、決してさせたくないです! 私達は、未来に生きているのですから」
いつもいつも杏奈は、あたしには真情を吐露していた。
向島専務の件で彼女の過去が明らかにはなったが、それでも名取川文乃という大物に、刃向かうように意見を言ってくれたのに感動した。
「名取川さん」
固い顔と声をしたのは、朱羽だった。
「私は、彼女の過去をすべて知っています。それでも彼女がいい。……本当は彼女は手の届かないひとでした。ですが、彼女を手に入れるために、忍月を利用し、ここにいます」
名取川文乃は、じっと朱羽を見ている。
「当主にも似た狡猾さは、私にもあります。私は決して出来た人間ではない。本来ならば、名取川さんが助力するに値する人間ではない。私はただの、どこにでもいる男で、ただ愛する彼女が傍にいて欲しい……それだけの、彼女に恋し続ける男です」
ぐすっ。
あたしより先に鼻を啜ったのは、木島くんだった。
「ですから、もしも彼女の過去を理由に、彼女を、あの……義理の母のような、軽蔑の目で見られるのなら」
朱羽はその場で畳に手をついて、お辞儀をした。
「申し訳ありませんが、私は……名取川さんの好意を辞退させて頂くしかありません」

