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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon
 

「朱羽っ!!」

「……陽菜、俺はずっと思っていた。もしこの先、名取川さんだけではなく、当主を含めてあなたの過去であなたに対する認識を変えようとするひとが現われたら、俺は黙っちゃいないと。生半可な気持ちで、俺はあなたを選んだわけじゃないよ」

 嬉しい。嬉しいけど……このままだと、名取川文乃と決別してしまう。

 それだけは回避しないといけない。

 あたしは嫌われてもいい。

 朱羽の力になってくれさえすれば、それでいいから。

「名取川さん。あの「鹿沼さん。香月さんを守るために、あなたはなんでもする覚悟はおあり?」」

 彼女があたしの言葉に重ねてきた。

「はい、それはあります。泥にまみれても、死ぬことになっても、なんでもします!」

 すると、名取川文乃は――。

「あなたの過去を踏まえた上で、私も策をたてたのです。香月さんとあなたが、うまく結ばれる方法を」

 ……違う、侮蔑ではない。

 彼女の顔に浮かぶのは、慈愛深い微笑み。

「確かに香月さんの置かれた環境は特殊です。それであなたの過去が、彼の足をひっぱることもありうる。その時の対策として、私は力をお貸ししようと思います。恐らくそれが、私に与えられた役割だと思いますので」

 彼女は、あたしのすべてをひっくるめて、助けようとしてくれている。

 それを感じて、あたしは杏奈と朱羽と顔を見合わせ、涙の滲んだ目を手で擦った。

「……正直、忍月財閥は排他的で、血筋だけがものをいう閉鎖的世界。さらに言えば、あの当主は私を恐れない。そこで私がなにを出来るのかを考えていた時に、鹿沼さんの過去に行き着いた。鹿沼さん、あなたの過去があるから私は、あなたを忍月の内部に連れることができる。そして恐らく、あの寡婦には私の力は通用する。だから……鹿沼さん。香月さんを守るためには、あなたの過去があってよかったかもしれない」

「え……?」

「そうでなければ、私は"切り札"を見つけれなかった。まあ、実はヤジマの案を横取りしてしまったのだけれど」

「切り札?」

「ふふ。後でこっそり、鹿沼さんだけに見せてあげるわ」

「は、はい」

 切り札とは、見せられるものらしい。
 
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