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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon

「課長、お箸の使い方も習っていたっすか?」
木島くんの問いに、朱羽は頭を横に振る。
「渉さんが、昔教えてくれて。今、普段通りにしていたんだけど……」
ああ、さすがは本家育ちの宮坂専務。
彼が朱羽に仕込めるということは、彼もまた本家でそう教育されていたのだろう。つまり、当主も箸さばきを注視するんだ。
「ふぅ……。そんな彼に引き替え、あなた達はやってはいけない食べ方を、すべて網羅してしまっているとは」
名取川文乃が頭を抱えて、ふらりとよろけた。
「いいですか。食べ物を突き刺してはいけません。お箸についたご飯を口でとってはいけません。料理に箸を伸ばしてとりかけてやめて、他の料理に移ってはいけません。汁を垂らして食べてはいけません。箸を持った手で器をとってはいけません。おかずばかりを食べてはいけません。器に口をつけてかき込んではいけません……」
その他たくさん言われたが、これ以外の食べ方ってどんなものがあるのか、逆にわからなくなってしまう。
「鹿沼さん!! せめてあなただけでも、頭に叩き込みなさい!!」
……朝ご飯が食べれたのは、それから三十分後のことだった。
いかに庶民は、自由にがっついて食べられるか、それを思い知りながら、そういえば衣里姫は食べ方が綺麗だったことを思い出す。
やはり生まれや育ちが、箸の使い方に出てしまうのなら、もっと頑張って上品に食べれるようになりたい。
当主対策というより、あたしのなけなしの女子力がそう訴えた。
あたしは、女子力も知識もなさすぎるようだ。
ご飯が食べ終えれば、茶室に行き昨日のおさらいが始まる。
お茶だけではなく、お花もひと通り習った。
あたしが活けるお花のセンスだけは、なんとか及第点を貰っている。
色や配置のセンスを求められるWEB部での経験値が、ようやく役だってくれたようだ。

