この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon

ありがとう、本当にありがとう。
昔も今も。
あなたのおかげで、俺は……ひとを守ることが出来るようになりました。
あなたが俺を、守ってくれたから。
だから今度は、俺があなたに代わって、あなたが愛する者達を守ります。
「香月と鹿沼を頼むぞ、渉」
「はいっ!」
……そして俺は、朱羽と共に帝王ホテルに向かう。
朱羽の紺色の背広は、沙紀と俺が朱羽の誕生日にプレゼントしたものだ。
――これを着ると、すごくついているんで、ここぞという時に着ます。
指定されたその場所には、ジジイとクソババアが、黒い和装姿で揃っていた。
「お前にいい相手を見つけたぞ」
途端、強張る顔の朱羽。
それを見ようとしないのが、ジジイだ。
「しかし、向こうが朱羽をフるかもしれませんよ」
俺の言葉に、紋付き袴のジジイは笑った。
「ワシがいて、ありえない」
ババアの視線を感じる。
ババアを今の言葉で表現すれば、美魔女という奴だ。
年老いているのに、色気だけは衰えない。
男の精を吸い尽くすような、魔女や魔物の類い……その意味での美魔女。
俺と朱羽を、値踏みするような目は、蛇のようだ。
ババアは、どうしても朱羽を本家に入れて、昔……親父とジジイと、堂々と関係したように、朱羽を愛人にでもしようとしているのだろう。
朱羽に向けられる好色な目が、ただ事ではないほどに輝いている。
今の落ち着いた社会人姿で、ババアと相対したのは初めてか。
「さあ、時間だ、朱羽」
……そりゃあ、本家はジジイとババア中心だろうさ。
だが世界は、もっと知恵を持つ者も、もっと身分が上の者もいる。
独裁を貫けるのはここまでだ。
あんたはもう、古い人間なんだよ。
今はもう、俺達のような若い世代が主役になる時代だ。
残忍で横暴なあんたの意志を受け継ぐものは、誰もいねぇんだ。
凝り固まった頭を、今がつんと殴ってやる。
俺は朱羽の手を握った。
「頑張れよ、お前には皆がついている。ひとりじゃない」
朱羽が、微笑んだ。
「はい」
「可愛い弟を、俺も守る」
少し朱羽の目が潤んだ気がした。

