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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon

あたしの頭の中はパニックになって、頭がガンガンする。
「なんだお前は。誰か、つまみ出せ!」
当主の怒声に正気に戻る。
「私は鹿沼陽菜と申します。この度の朱羽さんの見合いをどうかお取りやめになって頂くよう、お願いに……」
「誰か!! 聞こえないのか!!」
聞こえているのを、後方で名取川文乃がきっと抑えてくれている。
「お話をどうか!」
「出て行け!!」
いきりたった当主が凄まじい剣幕で怒り、湯飲みをあたしに投げつけた。
朱羽が立ち上がろうとしたのを専務が止め、湯飲みがあたしの頭にあたる。……あたしも避ける気はなく、額から血が流れたのがわかった。
「お願いです、後生ですからお話を聞いて下さい!!」
「聞く価値もない! 渉、連れ出せ!!」
バアアアアンッ!!
茶卓を手で叩いたのは――
「黙るのはあなたの方です!」
着物姿の衣里。
「な……」
誰もが面食らったように衣里を見ている。
「すべてを覚悟でやってきた彼女の声に耳を貸さずして、一方的に出て行けとはなんですか! 忍月財閥のご当主は、聞き入れるだけの度量もないんですか!」
衣里は、本気で怒っているのがわかった。
なぜ衣里がここにいるのかわからない。
だけど衣里はきっと……あたしに話をさせるために、当主のストッパーとなるために、この場にいてくれたような気がした。
そしてこの衣里の物言い。衣里を止める多分両親だろう……彼らが当主に謝る態度からして、忍月より衣里の家はきっと上なんだ。
本来、女が乗り込んで見合いをやめてくれなどと言えば、忍月側だけではなく、見合い相手側も憤るはずだ。なんだ、この女はと。
それを衣里が止めてくれている。

