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いじっぱりなシークレットムーン
第4章 Secret Crush Moon
衣里が言った。
「私もそれ思って、個人情報管理してる総務に訊いたら、そんな問い合わせもないしあったとしても教えないし、紛失や漏洩もありえないって」
さすがは行動派の衣里。あたしに会う前に既に動いてくれていたのか。
「まあ、そのためにセキュリティ上げたパソコン使っているわけだけど。だとしたら、課長がいない間に盗み見たり調べるか……」
「でも衣里。うちの会社は、席を外すときはパソコンにロックをかけるから、他人がパソコンの中身を見ることは出来ないわ。それに一昨日、昨日とあたしは席で作業してたし、昼ご飯も席で食べてたから、隣の席で不審なことをしているひとに気づくはずだわ。個人のパソコンではなく、メールサーバーの情報を見れるひとは……」
「ああ、サーバーはOSがLinuxだから、操作できるひとは限られるわね。プログラム開発全員と……、いや出来ない社員を数えた方がいいか」
衣里が指折り数え始めた。
「それと、衣里。昨日、あたしが抜けた後に、いなくなったひとはいなかったのかな」
香月課長との写真は完全に偶然ではなく、盗撮だ。
だとすれば、結城との写真も、意図的にホテルに入るあたし達を追いかけた者の気がする。
「……私もそれ最初に考えた。昨日、香月課長があんたにバックを届けに出た直後、一次会はすぐお開きになったんだけれど、幹事代理となった私の記憶では、二次会にこなかったのは男女合せて八人」
「八人……そんなに」
「その中には、杏奈もさっきの千絵も入ってる」
「……っ」
信じたくない。
あのふたりは、あたしにとっては仲がいい同性の仲間だ。
こうやって頑張れと、わざわざエナジードリンクを持って来てくれているのに、あたしを追い詰めるようなことはしないと思いたい。
だったら、誰?
香月課長を騙ったメールを送ったのは――。
「陽菜。なんで香月課長が、ここであんなひとりで仕事させているかわかってた?」
「手があいているのがあたしだけだから……」
「違うわ。今下はかなり空気悪い。このメールの被害あってるの、あんただけじゃなくて香月課長も結城もそう。私は多分、あんたをここに避難させてくれたんだと思うわ、香月課長」
「え?」
「とってもわかりにくい、優しさだけれど」