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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon
 


「なにもない朱羽さんなら、彼女にお似合いじゃないかしら。私、こんな憂鬱そうに俯いて、笑いもしない方と一緒になりたくはありません」

「し、しかし……あなたはさきほどまで、朱羽がタイプだと……」

「そんなの営業トークですわ、営業!!」

 衣里はころころと笑った。

 どうしてご両親はなにも言わないのだろう。

「いいですかな、朱羽はあんなアバズレと似合う男ではない。朱羽は……」

「はい、コロンビア大学を飛び級なさったんでしょう? それで忍月コーポレーションに入社して、シークレットムーンに入ってきたと。なぜ私が知っているかと? ふふふ、それは得意とする直感と観察眼です。ああ、お見合い相手だから調べたといえば、よろしいでしょうかね? おたくは私のことは、真下の長女というだけで、なにも調べていなかったようですけど」

 衣里は笑った。

「女は、きちんと調べないと大きく化けますわ。そちらの義母さまはおわかりになると思いますが、女の本性を見抜けない男もどうかと思いますね。お義母さまは、何人の人間を闇に葬ってのし上がったんでしょう。おわかりですか、お父様お母様。私、嫁いだら、このひとに殺されてしまいますわ。だってさっきから、朱羽さんの膝を手で撫でているんですもの。おえっ」

 朱羽が俯いていたというのは、そんなセクハラされていたからなの!?

 許すまじ!

「うわっ、成人している男性の膝を撫でているんですか。それ、親と子供ではないですよね。なんでそんな環境に、朱羽がいるんですか!?」

「そう、私もそれを思います。私、母親と近親相姦しているような男と結婚したくないわ。そう思いません、お父様、お母様。あのいやらしい感じからすると、朱羽さんの子供を産みそうだわ、あの方。こんな感じで触っていたんですよ?」

「し、失礼な!! 私はなにも……」
 
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