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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon
 


「この女~!!」

 襲いかかりに立ち上がった当主を止めたのは朱羽だった。

「やめて下さい。彼女は俺の恋人です。俺が十年以上も、愛し続けたひとです。あのひとを失うのなら、俺は生きていません」

「朱羽!!」

「私にあなたを愛させてください。あなたをおじいさんと呼ばせてください。今のままだと、私はあなたを恨んで、あなたと迎合できない。それは私だけではない。私達兄弟全員の意見です」

「渉、朱羽を止めろ!!」

「いいんじゃないですか、当主。あなたはワンマン過ぎる。今の時代、古いですわ、あなたの考え方は。忍月財閥の未来を思うなら、やり方を変えねば」

「渉っ!!」

「もっと、他の意見を聞いて下さい、ご当主!!」

 あたしは頭を下げた。

「もっともっと皆が幸せになれる方法を、模索して下さい。あたし達の命は、あたし達の人生は、あたし達のものなんです! あたし達の意志を無視しないで下さい!!」

 ほぼ悲鳴だった。


「新しい忍月を思うなら、押しつけではなく協調でお願いします! 専務も朱羽も、ご当主に似て頭がいいんです。彼らの才能を、能力を、反発という形で閉じ込めないで下さい!! 今はあなたが、孫の可能性を奪っているんです!」


 当主は崩れ落ちるように座った。


「彼らが後を継ぎたいと思わせる家をまずお作り下さい。今のままでは、母親の敵と同居することになる。それを喜ぶ人間がいますか!」

 しーんと静まりかえっていた。


「彼らは優しいんです。優しいから言い出せなかったものを、お祖父様が察して下さい。血が繋がっているのなら、わかるはずです!! もっと彼らを、彼らの個性を彼らの心を見てあげて下さい!! 彼らを愛して、彼らから愛されて下さい! まずは家族になってあげて下さい。彼らに愛されるお祖父様に、財閥にして下さい!!」


「命知らずが……」

 負け惜しみのように、当主が元気なく呟いた。
 
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