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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon
 

「朱羽。お前はそれまで本家にいろ。渉と共に」

 有無を言わせぬ、覇者の響きがあった。

 恐怖と嫌な予感に、背筋がぞくぞくする。それは常に感じていた不安が、強い輪郭を持ったような感じで。

 このままふたりを本家に行かせてはならない……そんな気がしてやまない。

 この状況を変えないと、朱羽とこのまま、忍月家と名取川家として引き離されそうな気がするのだ。


 名取川文乃も思案顔だ。

 彼女の申し出を拒めるのは当主しかいない。彼女を恐れるのは、下民出の美幸夫人だけだ。

 名取川家に当主が来ても、うまく説得出来ない気がするのだ。

 本家の、当主と美幸夫人の独壇場で話さないと意味がないような。

 もっともっと腹を割って、怒鳴られてもいいから話さないと――。

「真下のご当主。こちら……忍月朱羽さんとの見合いはいかがしますか?」

 名取川文乃は、突如衣里の父親に話を振った。

「いかがもない。元々は乗り気ではなかった見合いを、名取川さんの顔をたててしたまで。もう話がないのなら、引き取らせて頂こう」

「お待ちを!!」

 それは忍月当主だった。

「お見苦しいところをお見せして申し訳ない。日を改めてまた……」

「いりません、忍月さん。うちの娘を、命が危ないところには嫁がせられません」

「いえいえ! 危なくは……」

「保証できますか、ご当主。出来るというのなら、そちらの夫人がなにやら過去にしたということを、今ここで仰って下さい」

「……っ」

「あなたが言えないのなら、そちらの朱羽さんやお兄様でも構いません。夫人は、一体なにを?」

「申し訳ございません、これ以上はどうか!」

 潔いまでの、当主自らの土下座。

 逆に言えば、それだけ隠したいのだ。美幸夫人のために、当主は頭を下げねばならない状況にあるということだ。

 美幸夫人のしたことが、当主の足枷となる――。


 名取川文乃が口元で薄く笑う。彼女と目を合わせた専務もまた、僅かに笑う。

 これが彼らの想定した内だというのなら、最終的に頼れるのは――。

「臭いものにはフタをしろ、という言葉がありますが、激しく異臭を放つものを取り除かず、うちがその臭いが駄目だと言ったら、また違うところへと声をかけるおつもりですか?」

 そう、ストレートに切り出す……衣里しかいない。
 
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