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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon

「い、いや……そんなことは……」
「でしたら朱羽さんは、彼女に返せますか? そこの渉さんや兄弟に頼ることなく。ご自分でどなたかを養子にするなり後継者をたてると?」
「そ、それは……」
言い淀む当主は、見合いを断念する気はないようだ。
「お父様、どうお思いになります? この夫人がしたことは、並々ならぬものと思います。うちが断ったために、他の方が犠牲になると思ったら、忍びないわ!
だとしたらお父様。ご当主が、誰の目から見ても客観的に、私の命が安全な環境を作って下さったのなら、考えてもよろしいと思うの」
ああ、衣里は……他家にいかぬよう、繋ぎ止めてくれている。
「いかがかしら。ご当主、それが出来るのなら、お見合い続けたいと思います」
「……っ」
当主は、微妙な顔つきだった。
「あら、お嫌なら仕方がないわ。私は良心に則って、これ以上他の方が犠牲にならないように、他家に声がけをしたいと思います。見て見ぬふりは出来ませんもの。もしも忍月さんとの見合い話が持ち上がったら、命が惜しくば、本家に行くな。それなら婿に取れと」
つまり、後継者としての見合いの意味はなくなる。
他家が忍月の力を貰うような形になってしまうのだ。
「犠牲になど……な、美幸さんはそんなことしないよな」
「そ、そうですわ。想像力が逞しいお嬢さんだこと……」
空々しい。
そう、衣里の家と見合いをしてしまったがために、衣里に脅される形になったのだ。
「でしたら、私……彼女を。朱羽さんの恋人だという名取川さんのご令嬢を、私の代理として忍月のお屋敷に遣わして頂きたいわ。いかがかしら、陽菜さん。私の代わりに安全かどうか見極めて貰えます? それとも、朱羽さんを奪おうとする女の頼みはお嫌かしら」
衣里の指名をあたしは受けた。
「謹んでお受けしたいと思います」
あたしは、過去最高の出来となるだろう、畳に手をついてのお辞儀を衣里に披露することとなった。

