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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon

「もしも本家が安全で、朱羽にとって幸せな環境なのだとあたしが納得することが出来ましたら、その時はあたしは潔く朱羽を諦め、衣里お嬢様に朱羽をお願いします」
「ええ。ですが、私の代理としての陽菜さんが、たとえば粗末に扱われたり、彼女がやはり駄目だと判断するのなら、その時は……忍月さんとの見合い話は、どこの家とも成立しなくなるでしょうこと、お忘れなく」
衣里は袖元で口を隠して笑った。
「彼女に取り繕うか、臭いものを取り除くか、どちらにならないよう、お祈りしていますわ」
「あてに出来ないわ!」
そう言ったのは美幸夫人だった。
「このひとは、朱羽と共に見合いを壊したいのよ。客観性なんてあるはずもない」
確かにそうだ。なにも言い返せない。
「客観性を仰るのなら、四人兄弟のうち朱羽さんが次期当主に相応しいという客観性はあるのでしょうか」
衣里も負けない。
美幸夫人と衣里が睨み合っている時、専務が笑いながら言った。
「確かに真下さんのお嬢さんが言うとおり、朱羽が次期当主に相応しいのか、客観性があるわけではない。ただ当主が、後継者にと思っているだけで」
「渉さん……?」
朱羽が専務を見上げた。
「カ……彼女、陽菜さんでしたっけ? 朱羽を取り戻したいのは、恋人として以外はありますか?」
「会社社員として。会社に必要な人材です。忍月より、我々社員は彼を必要としています」
「でしたら。それを証明出来ますか。朱羽が忍月以上に、あなたの会社に居る方が有能さを発揮出来ると」
「証明……」
専務はなにを言い出したのだろう。
「美幸さんが、陽菜さんの客観性に声を上げるのなら、こちらも客観性を重んじるべきだ。まず朱羽が、忍月と陽菜さんの会社どちらに力を発揮出来るのか、それを然るべき者達の判断に委ねましょう。それで陽菜さんの訴えは客観性があるのかどうかがわかる」
然るべき者達の判断?
「当主。俺達兄弟には監視役がついているのでしょう? 彼らは朱羽が次期当主に相応しいかどうかを客観的に判断することを義務づけられている」

