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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon

その時、ノックの音がして声が聞こえた。
「失礼します。お菓子とお飲み物をお持ちしました」
カバがはっとして振り返る。
入って来たのは、結城と木島、三上の三人。
ご丁寧にも従業員の服を着ている。
「お、おお、君は。先ほどはすまなかったな」
当主が、抹茶のアイスとクッキーが置かれた皿を置く結城に、声をかける。
「いえいえ、とんでもない。楽しいひとときを過ごさせて頂きました」
結城が人なつっこい笑みを浮かべた。
おいおい、結城。
従業員になりすまして、万が一のために助成しろとは言ったが、当主と仲良くしろとなど言ってねぇぞ?
それに、スマホで合図もしてねぇのに、なんでお前達入って来たよ?
「先ほど咳をなさっていたので、喉を痛められているのだと思い、珈琲はブラックではなくカフェオレにさせて頂きました。軽めにしてあるので、お体によろしいかと思います」
「そうか、すまないな。ええと……結城くんだったか」
「はい。結城と申します」
「そうか、今度またホテルを利用する時、君を指名するぞ」
「はい、喜んで」
これは愉快だ。
結城、お前当主と"お友達"になったのかよ。
俺ですら恐れる、あのジジイの茶飲み友達かよ。
お前そこまで、カリスマあるのか?
衣里を見た時のように、驚いた顔をしたまま固まる朱羽に、大笑いしたいのを堪えた。
「すまないが、ふたつ追加で」
俺が言うと木島が返事をした。
「毎度あり」
……違うだろうよ。
「ふ、ふたつ追加ですね、承りました」
結城がそう言い、木島の手を引き摺るようにしていなくなる。
仲間が顔を出したことで、カバにも笑みが浮かんでいた。

