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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon

……カバにはいい迷惑だろうが、皆でおやつタイム。
ジジイが、カバの食べ方や飲み方を盗み見している。
しかしカバはその視線をなんのその、衣里にも引けを取らずに優雅な手つきで食べ飲んだ。
……お前、頑張ったんだな。
それでも気まずい空気の中、俺と名取川さんが話を振るという形でなんとか終わり、解散となる。
居心地悪い思いをしたジジイとババアは、予定があると早々に退場。
「渉、朱羽を連れて本家に三時だ」
帰りたいなら、無言で帰れよ。
そう思えど、皆の前で言われては了承するしかない。
この感じは、怒ってるぞ。
「はい、すぐ俺達も本家に行きますので」
三時というと、あと三十分しかねぇ。
タクシー移動を入れたら、ここに居られるのはあと十五分だ。
広間から出た踊り場で、名取川文乃が話しかけてくる。
「大丈夫なの? 監視役って」
「カバと朱羽がしてきたことを信じるだけです。あいつらがやってきたことは決して無駄にならないはずだ」
そう、俺は……監視役は重役ではなく、病室に来る社員のうちに居ると思っている。
だから、俺は賭けた。
監視役は、ジジイの権力に揺らがないと。
カバと朱羽がしてきたことを、支持してくれると。
「結城が社長になった。結城が見知らぬ監視役をもまとめあげるはずだ。敵も味方も懐に入れて、権力に屈しない人情派の結城の色に染め上げる……。それに期待しています」
当主しか知らない監視役でも、それはカバと朱羽の、結城と衣里ら社員全員の、俺達の仲間だから。
月代さんが選び、月代さんを見捨てなかった社員を、俺は信じる。
朱羽がカバの怪我した額に心を痛め、カバを抱き寄せている。
しばらくは互いの顔を見ることは出来ない。
今までずっと離れていたくせに、少しでも離れることを耐え切れなさそうにしているふたり。
あまりに哀れで俺は顔を背けた。
残酷だよな。
カバを本家に入れるために、試練を与えたのは俺みたいなものだ。
今日中に解決が出来なかった。

