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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
 


「みゃ~」


 長い尻尾がぴんと立ち上がり、そのまま左右に揺れた。

 そしてむっくりと起き上がり、そのまま足を進めると、あたしの膝を踏みつけながら太股の上で丸まった。


「みゃ~」


 背中を向け、なにかを言いたげに振り返りながら鳴く、お上品な白いふさふさ猫。


「なに? あたしに肩を揉めとか言ってない?」


 あたしは腕時計とスマホをお尻の後ろに隠して、疑心暗鬼。

 このみゃーみゃーの意志がわからない。

 すると不満そうにあたしの膝の上で立ち上がった猫は、あたしが腕組をしていた腕の上によじ登り、両手の間に入ってまた丸まった。


「みゃ~」


 だから一体なんなのよ。

 落ちそうで怖くて両手で猫の身体を抱き上げたら、満足そうに上から見下ろされた。


「みゃ~」


 前回とはまた違う、これは猫なりのお愛想なんだろうか。

 尻尾をふーりふーりと揺らして、お愛想をしてくれている分、前よりほんの少し可愛く思える。


「みゃ~」


 抱き上げて揺らしたら、笑っているのか欠伸をしているのかよくわからない顔をした。……笑わなきゃ良かったのに。


 しばしヴァイス様を持ち上げていたが、そのうち腕が疲れてきて普通に抱いたら、ヴァイスはあたしの手をぺろぺろと舐めた。


「みゃ~」


 もしや、あたしを気遣っているのだろうか。

 朱羽がいなくて寂しいだろうからと、慰めにきたとか?


 愛らしい大きな目が、やけに慈愛深い優しさを感じてしまう。

 あたしにだけ態度が違う性悪猫で、朱羽を取り合ったライバルに!

 
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