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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
 


「みゃ~」


 まさか、恋する立場は同じだから、あたしの気持ちがよくわかるよとでもいいたいんだろうか。


「みゃ~」


 ……なんだか、朱羽がいないことによる、この寂寞とした悲しみをわかってくれる存在がいてくれるのが嬉しくて、ヴァイスを……あの性悪猫を抱きしめて、思わず泣いてしまった。

 あたしの頬をヴァイスが、ぺろぺと舐める。

 頬だけではなく、顔中舐められた。


「ありがとう……。頑張るからね」

「みゃ~」


 この猫、いい奴なのかもしれない。

 今はとっても、お前のこのぬくぬくとした温もりが、朱羽が猫になってここに居てくれるようで、愛おしく思うんだ。

 スマホは言葉が伝わっても、温度がないから。


「あははは、ぺろぺろしすぎだって」


 
 その時、部屋の外から複数の声がした。


「ヴァイスはどこ!? またヴァイス、自分のフンを舐めたの!? どうして泥とかフンとか汚いものを舐めるくせあるんでしょう。あちこちおかしな菌をつけられる前に、早く洗わないと!! 手分けして!!」

「はい!!」

 
 ………。


「みゃ!」


 ………。



「すみませーん、猫はここです!!」

「ありがとうございます!! さあ、ごしごし洗うわよ!?」

「ふぎゃーっ!!」



 ……涙を返せ。

 やはりあいつは、あたしの天敵だった。

 優しいなどと思わなきゃよかった。どうせ汚れた舌をふたしの手とか頬とか使って拭いていたんでしょうが。

 あたしは、ぷりぷりしながら手と顔を洗った。



 
 ***


「沙紀さん!? 沙紀さんが"第三者"なの!?」

「そーなの。驚いた!? あはははは」


 屈託のない沙紀さんの笑いに、あたしは半ば拍子抜け状態。



「いやー、だけど着物姿お似合いよ、陽菜ちゃん。私なんかこんな童顔で小さいから、着物を着た途端に七五三よ、恥ずかしいったら」


 いやいやいや。

 このまま着物談義に乗るわけにはいかないよ?


 まずは説明して貰わないと。

 外部との連絡を絶たせ、公正な判断を下す"第三者"。

 確かに専務は言ったのだ、忍月側も知っていると。

 沙紀さんは、忍月当主に専務の恋人として紹介されていたんだろうか。

 え、彼女は認められていたの?

 そんな話、したことなかったけど。

 
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