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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「沙紀さんは、本家の人達と顔なじみだったの!?」
「違うよ、私、渉から忍月へ紹介して貰ったことないし!」
沙紀さんはけらけらと笑う。
「だって渉、私が渉の恋人だと知ったら、渉曰く"クソババア"に殺されると、それはそれは心配して。私はずっと昔に渉の専属秘書としてしか紹介されたことがないわ。それも渉、渋々ね」
「向こう、それで納得してたの?」
「私が忍月に入った一年後に、当主の奥方が他界してしまったんだけれど、その奥方が倒れていたのを、おんぶして病院に送ってあげたのが縁で、その奥方に本当によくして頂いていたの。忍月コーポレーションに入れたのも、その方の口添えがあったから。そうじゃなきゃ、商業高校出のこんな貧乏人が、あんな大企業に新卒で入れない」
……確かにそうだ。
沙紀さんは経理として入って、その後は専務に見初められて秘書として今がある。そうした道筋を作ったのは、専務へと引き合わせたのは、今は亡き当主の妻、つまり朱羽と専務の祖母ということになるのか。
「渉の秘書にもなったこともあり、私は色気の欠片もない貧乳女だし、渉の近くにいながら、当主にとってノーマークというか、どうでもいいというか。それに渉が外面的に女遊びを派手にしていたから、私の存在は隠れていたの。嫌になっちゃうわよ、あれで渉、クソババアのせいで女嫌いなんだって! あんなに女侍らせているのに、はあ!?という感じよね」
OSHIZUKIビルディングの噂のひとつに、後継者候補は女嫌いとあったけれど、案外あの噂、朱羽達兄弟の近いところから流れたものなのかもしれない。監視役も実際いたのだし。
「渉見ていたら、女遊びが建前なのか本音なのかわからなかったけれど、あいつはあいつなりに、心を読まれて利用されないために、外壁作って頑張っていたのよ。まあそんな渉の話はどうでもいいや、私の話だったわよね。私ね、執事見習いしてたのよ、本家で」