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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
  

 話が極端の方向に進んでいく。

「執事見習い!? メイドじゃなく?」

「そう。その方が自然だからって、渉が。それに腕っ節も自信あるし、怪力だし」
 
 沙紀さんの姿は、ポロシャツにジーパン。
 髪は短いし、本当に女の子っぽい少年といっても通用する。

「渉は私を当主や夫人に会わせようとしなかったし、会っていた時は髪が長くて化粧をして、睫毛ばっさばっさの、私史上黒歴史になる……濃い化粧をしていた時で。まあそんなのもあって、渉経由で男として入ったのよ。始めから女だとばれる心配はしていなかったけれど、何日経ってもまるでばれないのが逆に失礼だわと思っちゃったわ!」

 沙紀さんは大笑いだ。


「なんでまた……」

「夫人や当主に信頼を勝ち取るためよ」

「信頼?」

「そう。渉は、当主に朱羽くんと共に本家に呼ばれるのは既に覚悟していた。すると本家に閉じ込められた形になるから、外部と連絡しあえない。携帯電話だって、おそらく部屋中に盗聴器仕掛けられているだろうし、メールだって確実とは言えないし」

 実家に盗聴器!

「外部とは、陽菜ちゃんや結城くん達、朱羽くんを取り戻そうとしている人達のことよ。渉は、朱羽くん奪還の指揮者気取っているし、忍月の裏事情もわかっているから、どうしても助言なりなんなりし続けたいと思っているの」

 沙紀さんは……、専務のことをよく知っているのだろう。

 まさに一心同体。

 相手がいなくても、いる時と代わらず動くことができる。

 それは、あたしにとって憧憬だ。


「今回、渉は……監視役を出したでしょう? あれが渉にとっての最後の賭けだった。シークレットムーンの社員であれば、必ず同調してくれるということを信じての。つまりこちらの独壇場に乗せる必要があった」

「独壇場?」

「そう。One for all, all for one. 渉は陽菜ちゃんの信条が、シークレットムーンの信条だと信じている」

「………」

「渉は本家に入ってしまったら、私や陽菜ちゃん達を守る力が阻まれると思っている。彼が本家にいる間、当主や夫人がどう動いても、近くで助けてあげることができないと」
 
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