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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
専務は、どこまで人情が厚いのだろう。
彼がそこまでをすることはないのだ。
彼が朱羽の兄だとはいえ、これはあたしが自分の意志で決めた戦いなのだから。決して専務のために戦っているわけではないというのに。
「だから渉達が本家に居る間、当主や夫人に信頼されて堂々と陽菜ちゃん達の傍に居れる存在が必要だった。密やかに、渉と陽菜ちゃんサイドの連絡網をしてくれる存在が。私はなんとか、本家での信頼をとれたからここにいる。だから私は、ルールに則って、結城くん達と連絡を阻もうとかそんな気はない。むしろ渉も、私を遣わすことで、裏で結城くん達と一致団結させることを望んでいる」
「沙紀さん……、ありがとう。もうなんと言っていいのか……」
「やだ、泣かないでよ、陽菜ちゃん。私は自分のためにも戦っているんだから、そこはお互い様よ。協力をすることで協力して貰っているようなものだもの」
「協力?」
沙紀さんは、強い目をしてあたしに言った。
「そう。今まで私は、渉によって危険から遠ざけられてきた。今度は、私が動いて渉を救い出さなきゃ。朱羽くんの望む通りにして、さらに渉に余波が及ばないようにするためには、あの当主の根本的な考え方を改めて貰うしかないの。もっと道があるということをわかって貰わないと」
「沙紀さん……」
「陽菜ちゃん。私、陽菜ちゃんも私と同じ考えだと思ってる。守られてばかりいるような、そんな弱い女ではないと」
「うん! あたしも朱羽や専務を守りたい。今度はあたしが、お姫様を助けに行く番だと思ってる」
「そうだよね! 渉がお姫様というのはキモいけど、だけど女だってやるときはやるんだから!」
「そうそう! まったく同感!」
あたし達は両手の指を絡ませあって喜んだ。