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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「私はね、渉が忍月の跡取りのひとりだと、さらには本家育ちで後継者に一番近いところにいるという事実を知って、正直悩んだの。それじゃなくても、忍月コーポレーションの専務とどうこうというだけで、シンデレラ気分というより身分差がありすぎると思っていたのに、実際はさらに雲上人で、もうどう転んだって隣には立てないと。私のせいで渉が苦境に陥るとか考えたら、絶対別れた方がいいと思った。これ以上、渉を愛する前に」
沙紀さんの眼差しが女のものとなる。
「だけど駄目だった。どう思っても、渉がいない人生は、もう考えることが出来なかった。……渉がいない人生は、生きていることが無意味に思えた。だったら、苦しくても傍にいたい。渉が動けない部分で私が動く。私が、渉の影となり足りない部分を補えば、絶対一緒の未来は切り開けると、そう思ったの」
色気がないと彼女はいったけれど、恐らく彼女の色香は、専務に関係する部分だけでるのだろう。そこには、童顔とは思えないほどの、円熟したような女の香りすら感じられた。
……専務への愛ゆえに、専務のために彼女は美しい女となるのだろう。
「私は、命を賭けて渉を愛してる。命がけの愛なの。陽菜ちゃんは?」
あたしは……。
「あたしも朱羽のために命をかけられる。あたしも、半端な気持ちで恋愛を始めたわけじゃないの。朱羽だから恋愛をしたいと思ったの」
あたしだって、命がけの恋愛をしている。
最初で最後の恋愛だ。
「……そのために、大切なひとを傷つけた。それでも、あたしは朱羽を選んだ。どうしても朱羽じゃないといけなかった。あたしの苦しかった過去も、朱羽に繋がっていると思えば、あたしはそんな過去すらありがたいと思った」
「陽菜ちゃん……」
「朱羽をあたしに会わせてくれた専務には本当に感謝してる。専務が朱羽を助けてくれていなかったら、あたしの人生もまた変わっていた。専務は、あたしの人生をも救ってくれたの」
満月の真実は、朱羽によってあたしは昇華出来た。
朱羽がいなかったら、その重さにあたしは耐えきれなかったと思う。
朱羽からは、本当に色々なものを貰って支えて貰った。
そんな朱羽を作ってくれたのは、専務だ。
専務が朱羽を庇護してくれたからだ。