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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「頑張ろう、沙紀さん。女の度胸、見せてやろうよ」
笑うあたしの目から涙がこぼれ落ちた。
「そうだ、そうだ。見せてやろう。渉と朱羽くんをいじめる奴なんて、投げ飛ばしてやるんだから!」
沙紀さんの目からも涙が零れた。
「ねぇ、陽菜ちゃん。なんでタメ語になったのに、私のことさん付で呼ぶの?」
不意に沙紀さんがそう聞いた。
「そう、だよね。だけどあたしにとっては沙紀さんは沙紀さんだよ。最初に、電話で話した時から、沙紀さんと思ってた」
沙紀さんは笑う。
「それはきっと、私が渉の相手だったからだと思うよ。最初から陽菜ちゃんは、渉を朱羽くんの大切な身内という目で見て、付き合う前から、朱羽くんにとって大切なひとは、陽菜ちゃんにとっても大切なひとだと、そう無意識にでも思っていたと思うよ?」
「そう、かな……」
「そうだよ、絶対! あの時から、陽菜ちゃんは朱羽くんを好きだったんだよ」
朱羽ヘの気持ちを自覚出来なかったあの時。
それでも、熱を出した朱羽を放置出来ずに、かけた一本の電話。
あれが縁で、沙紀さんはここにいる。
あの時彼女は、あたしの存在を知っていた。
朱羽が、あたしのことを話していてくれた。
「朱羽くんは……陽菜ちゃんの隣で寝てる?」
「寝てるよ。最初は起きていたけど」
一緒に寝ていると認めるのが照れくさい。
「ふふふ。渉がね、言っていたことがあるんだ。朱羽くんは絶対、他人が横にいると眠らないって。他人を信じていないからだと。渉ですら、朱羽くん横で眠らずにいたということを、今でも嘆いているんだよ。そう考えたら、渉よりさらに血のつながりのない"他人"の陽菜ちゃんは、どうなのかなと思ったの。ふふ、陽菜ちゃんは特別なんだね」
「……っ」
朱羽の寝顔を見たい。
美しく、少し幼くも見えるあの寝顔を。
朱羽に、会いたい――。
「朱羽くんは陽菜ちゃんを信じている。だから陽菜ちゃん、頑張って助けだそう。女の根性、見せてやれ!!」
「そうだそうだ、見せてやる!!」
「えいえいおー!!」
「えいえいおーっ!!」