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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
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「陽菜は、頼もしい戦友を手にしましたね」
「ふふふ、あら寂しい? 衣里さん」
「少し。だけど、沙紀さんがいてくれてよかったと本気に思います。同じ立場の彼女は、きっと陽菜にとってアドバイザーになるから。陽菜は、これから色々と学んでいかないといけない。理論や感情だけでは解決しない出来事もあるのだから」
「そうね。変えられる現実と、変えられない現実がある。それをどこまで変えて見せるのか、正直私はわくわくしてるの」
「名取川さん?」
「私もかつては、身分違いの恋愛をしていた。私の方が上だったんだけれどね。双方納得の上で別れることになったけれど、その別れ際彼は、高価な友禅の着物を贈ってくれたの」
「陽菜の着ていた着物ですか? もしかして……その相手は! すごく驚いた顔をして、陽菜を見ていたのはもしかして!」
「ふふふ、彼も覚えていたのね……。陽菜さんに、私が果たせられなかった夢を果たして貰いたい。私は、優しくなんてない。自己中心的な女なのよ」
「私はそうは思いません。果たせなかった夢を、誰かに託したっていいじゃないですか。それが自分が気に入る人間の幸せにも繋がるのなら。私だって陽菜の友達でありながら、陽菜に……私が果たせなかった夢を託しています。名取川さんと同じです」
「ふふふ……」
「ではもうそろそろ、声をかけに行って来ますね。この分だと、私を外して盛り上がって終わりそうなので」
「そうね。もう少ししたら、結城さん達も来ると連絡がありました」
「申し訳ありませんが、その時……名取川さんのお知恵も拝借してよろしいですか?」
「こんな年老いたもののものでよければ」
「まだまだ若いですよ、名取川さんは。よし、では行って来ます!」
「行ってらっしゃい」
襖の奥で衣里と名取川文乃が会話していたことに、沙紀さんと団結するあたしは気づかなかった。