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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
***
あたしの傷も大事にならず瘡蓋(かさぶた)となり、ひりひりとした痛みも引いた。
ただ瘡蓋の位置が前髪の生え際に近かったために、前髪は垂らしておかないと目立ってしまう。
まあそんなんで、元々中途半端にしかなかった前髪をきっちりと作ったのは、小学生以来。
元々童顔なのに前髪があったら余計幼く見えるが、これはこれでここまでしなければならなかったというインパクトがあると、沙紀さんと衣里が前髪を作ってくれた。
「陽菜ちゃん、その髪型で着物着ていたら、大正時代とかのお嬢様みたい」
「あははは、陽菜、いいよそれ。年の差恋愛なんてまったく感じさせないよ、あははははは」
……馬鹿にされているのかどうか微妙だけれど、鏡の中のあたしは、ぎりぎり許容出来る程度だった。本当にぎりぎりだけど。
そんなのを自撮りしたのをLINEで送ったら、"可愛い"と目がハートマークの白猫スタンプが。
そして朱羽もすぐ専務と映った写真を送ってくれた。
ふたりは笑っていて、なんとか元気にやっているらしい。沙紀さんと嬉しくなって飛び跳ねた。
衣里と結城と木島くんと杏奈も来た時、全員で集合写真を撮ったところ、"近い"と怒りマークで来た。
"木島くんに妬かないでよ~"といれたら、"結城さん!"とまた怒りマークで来た。
だってあたしが真ん中にいるんだから、結城がところにいても同じなんだけれど、朱羽からそのあと三つ、怒りマークだけのLINEが来たから、来た分以上のハートマークを送ると、ようやくにこにこ笑う白猫のスタンプが来た。
そんなやりとりをしていたのだけど、ある時を境にぱったりと既読マークすら出なくなり、応答がまるでなくなった。
それは朱羽と離れて二日目の昼のことだった。
いつかはと覚悟の上とはいえ、繋がりがひとつ断たれたようで辛い。
朱羽がそのLINEで窮地に陥っていないことだけを切に願う。
朱羽に会いたい――。
あたしは朱羽の腕時計に口づけながら、神様に祈る。
どうか、朱羽に会わせて下さい。
どうか、朱羽の熱を下さい。