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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
見合いの時、ジジイはカバに揺れた。
だからカバがジジイを動かすことは出来るかもしれねぇ。
拒絶しか考えてなかった俺や朱羽達と、ジジイとの妥協案。
血が繋がる祖父と孫だから、わかりあえると……カバは言った。
本家で朱羽が俺に言った。
「渉さん……。もし義母と当主が丸くなり、会社も潰されず、陽菜や沙紀さんとの将来を見据えた付き合いをしてもいいという、そんな話になったらどうする?」
「なりたいのか、忍月の当主」
「ううん、俺にはそれまでの力がない。相応しいのは渉さんだと思ってる。俺には知識も経験も足りなすぎる」
確かにこいつは、社会に出たばかりだ。
「……もし渉さんが当主になるとして、沙紀さんが正妻に認められたとして、なにか厄介になるものはなに? 忍月の専務をまだやってたいの?」
「いや、別に忍月コーポレーションはどうでもいいな。俺があそこにいるのは、月代さんの会社を守りたいからだけだ。忍月コーポレーションに未練があるのなら、とっくにジジイの提案受けて社長になってる」
「……俺がなりたくないから、渉さんに押しつけているわけではないんだ。それだけは勘違いしないで。押しつけて終わる話だったら、とっくにしてる」
「ん」
「もしも、話合いがうまくいって、本家から義母を追い出すなりなんなり出来たとして、当主が俺達の今の境遇に理解を示してくれたとして。もしも俺達が当主がしてきたこと、あの女がしてきたことを許せると思える日がくるとしたら。……渉さんが当主になって、さらに改革をしていくのがベストだと思う」
朱羽の眼差しはまっすぐだ。
「それは、すべての環境が渉さんの願うものになったらという前提の話だからね?」
フォローをいれるのは、俺が忍月が嫌いだということを知っているからだろう。
「今の保守派の当主なら忍月を変えられる力はない。だけど渉さんは違う。お世辞抜きにして、渉さんはトップを目指せるひとだと思うから。知識も経験もある。だてに、社長職を打診される専務をやっていない。……だけど俺は、すべてが不足している。俺が立つには、時期が早すぎるんだ」
「朱羽……お前……」