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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
 

「渉さん。未来のことはどう変わるかわからない。だけど……俺の一案は、渉さんの当主の座を、いずれ俺が引き継ぐ。その時渉さんと沙紀さんに子供が出来ていたら、今度は俺が返してもいい。次期当主が育つまで、現当主は仕事を教えていく……そんな未来があってもいいと思うんだ。……俺と渉さんが、力を合わせて作る未来が」

「つまり今のワンマンな形ではなく、当主と次期当主が一体になって進めると?」

「そう、形式上は役があるけれどね。正直俺は肩書きがあろうとなかろうとどうでもいい。そんなものは気にしないタチだし。だけど俺は、シークレットムーンに籍をずっと置いて貰うけどね」

「はは、二足のわらじでやるつもりか? 財閥とシークレットムーンを」

 朱羽は頷いた。

「駄目かな。結城さんのシークレットムーンは必ず大きくなる。そこと提携しながら、忍月を大きくしていくのは」

「そんなこと、いつ考えてたんだ、お前」

「見合いの時。陽菜が当主に、拒絶ではなく迎合の道をというのを聞いて、思ったんだ。当主は俺達に引き継がせたい。その線を貫くとして、俺達にも出来ることはあるなと」

 確かに、あの時カバが、理解しあえと言った言葉は俺もなにか心に突き刺さるものがあった。

 親を亡くしたカバは、家族の断絶を望んではいない。

 どうでもいい、親と祖父母ではあったが、カバに言われて小さくなっているジジイを見た時、ざまあと思う反面、同情が芽生えたのもまた事実。

 どうでもいい血なのに、血が繋がるものを笑って見過ごすことが出来なかったのもまた事実。

 俺は財閥を継ぎたくはないし、ジジイも大嫌いだ。

 ババアはどうでもいいが、ジジイには……俺には、本当に小さい頃、笑って抱き上げてくれた思い出があったのを、その時ふっと思い出した。

 消せぬ血の繋がりというものがあるのかもしれない。

 生きている限り。


 だとすれば。

 朱羽の言うように、俺達にとって困った要素がない環境ならどうなんだ?
  
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