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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
俺は考えた。
沙紀が居て、沙紀だけを妻に出来て。
今の本家の体制を変えて、ジジイをおとなしくさせてババアを追い出すことが出来たら。
俺は別に、忍月コーポレーションが好きなわけでもねぇけど、働きたい。仕事上の駆け引きや、競り合いが好きだ。規模を拡大できたら、興奮が止まらない。
俺と朱羽が居れば、海外にも手を広げられるかもしれねぇ。
忍月コーポレーションに朱羽が居た時に、ほんの僅か抱いた世界の夢が、実現できるかもしれねぇ。
「他の兄さん達がどう言うかはわからないけど」
「会社を潰されずにすむんだ。俺が恩を売って、あいつらなりに会社を大きくして借りを返して貰えば、世界の忍月財閥になれるな」
「ふふ、渉さん……いけない目をしてる」
「なんだよ、それ!」
「あはははは」
「中々面白い案じゃないか、朱羽。だけど俺がやるなら、どでかくするぞ。それをすべて背負いきれるか、お前。もしかして余裕なくして、カバに愛想つかされるんじゃ?」
すると朱羽は笑った。
「やだなあ、渉さん。俺はひとりではないんです。陽菜がいる。俺がどこにいても、陽菜と友達と仲間が、辛い時は助けてくれます」
とても晴れやかで、爽やかな顔で。
「彼女は仕事が大好きなんですよ。俺が大好きな皆も、仕事が好きなんです。一緒に仕事が出来るのって、すごく楽しいと思いませんか?」
「はっはっは。お前かなりシークレットムーンに感化されたな。忍月コーポレーションに居た時のお前に、今の台詞は死んでも出てこねぇぞ」
「でしょうね。俺の人格形成にも、シークレットムーンで働くことはプラスになると思います」
本気に考えてみようか。
沙紀を喪わずに、そして朱羽に引き継ぐことが出来るのなら。
沙紀とカバも仲がいいし、絶対あのババアのようになる奴らではない。
結城や衣里も、三上や木島も……身分や肩書きで姿を変える奴らじゃない。人間の本質を見て動く奴らばかりだ。
いいですかね、月代さん。
あなたの子供達を、俺も結城と共に面倒みることは。
その時、ノックの音がした。
「失礼します。ご挨拶にお伺いしました」
入って来たのは――。
「私、執事見習いの吾川と申します。お見知りおきを」
出したはずの沙紀が、唇に指をたてて言った。
なぜここに居る!