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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
***
帝王ホテルの小宴会場――。
三十人まで入るらしいこの会場は洋間となっており、中華のような大きな円卓の周りに椅子が並べられていた。
忍月からは当主、美幸夫人、朱羽、専務。
真下家からは、当主、夫人、衣里。
そして名取川文乃とあたしの合計九名が席についた。
あたしの左隣が専務、右が名取川文乃。
やはり見合いの続行もあるため、あたしと朱羽を隣り合わせには出来なかった専務は、座る時に「悪い」と小声で呟いた。
大丈夫と小さく首を横に振る。
だってその隣に、現実の朱羽の姿が見えたのだから。
あまり長く見ていられないが、自然と視線が合った瞬間、朱羽の瞳が切なげに揺れ、悲哀と感動を半々にさせた表情を向けてきた。
少しだけやつれたような気がする。
それでも孤高の美貌は衰えることなく。
触れたい。
「………」
朱羽の手が伸びる。
「……っ」
あたしの手も伸びる。
触れたい――。
近づいたあたし達の手は、
「今は抑えろ」
俯いた顔のままの専務の両手が、あたし達の手首を掴んでテーブルの下にもっていき、それ以上の動きを制した。
こんなに近くにいるのに、触ることも話しかけることも出来ない。
これがあたしと朱羽の距離――。
専務が立ち上がった。
「ではこれより始めますのは、前回の真下家の衣里嬢と、忍月の朱羽との見合いにおいて、名取川家の陽菜嬢が見合いをやめて欲しいと懇願したことに端を発します。
それにより衣里嬢は、疑問を呈されました。
まずは本家に嫁ぐにあたる安全性。これは私の母と朱羽の母が死んだことに起因する、美幸さんの独裁による客観的な暴力性はどうか」