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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
 

「渉さん!」

 美幸夫人が声を上げたが、専務は構わず続けた。

「このことより、衣里嬢は陽菜嬢に本家は実際のところどうなのか、代理として調査に派遣されようとしましたが、陽菜嬢は朱羽の恋人であり朱羽の部下。そこには客観性がないのではという疑問に対し、衣里嬢が朱羽の後継者としての客観性はどうなのかと仰られたことにより、朱羽が勤めている会社において当主の命を受けて密やかに監視していた監視役二名をここに召喚し、実際朱羽は当主としての資質があるのか、それとも、陽菜嬢の言うとおり朱羽が勤めているシークレットムーンに留まるのが妥当なのか、客観的な意見を聞こうというのが、本日皆さまに集まって頂いた次第です」

 専務は滔々と語る。

「監視役はふたり。朱羽には後継者としての客観性があるのか、それとも陽菜嬢の言葉通り、会社の方に必要な人材なのか。その客観性も監視役の判断に委ねることにします。ただし、監視役ふたりともの判断を必要とします。もしもひとりの場合は、朱羽が会社において必要な人材だと認めない見方もあったのだということで、後継者としての方が相応しいという判断にします」

 監視役ふたりの判断の組み合わせは、四通り。

 そのうち一種類しか、朱羽には道が拓かれていない。

 どちらも朱羽を、シークレットムーンに残留した方がいいという組み合わせしか、許されない。

 これは――。


 考えてみれば、こちらの方が分が悪い。
 
 それなのになぜ専務はこの方法を強行しようとしたのか。

 ……シークレットムーンの社員が朱羽を助けると、そう信じているから?

「現在午後一時。監視役は午後一時集合としています。現われないようでしたら、棄権とみなします。では始めましょう」

 専務は、パンパンと大きく手を叩く。

 ドアが開かれ、中に入ってきたのは……スーツ姿の男。

 とろんとした目。
 分厚い唇。

 そして、いいガタイ。

 え? 木島くん?
 木島くんが監視役だったの!?


 驚きに目を見開く前で、次はスーツ姿の杏奈が入って来た。

 え? 木島くんと杏奈!?

 衣里も朱羽も、専務も驚いている。

 誰も監視役が誰かわからないのだ。

 
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