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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
だけど――。
違う……。木島くんと杏奈じゃない。
ふたりに追従するように中にゾクゾクと男女が入ってくるのだ。
うちの社員ばかりだ。
そう、名取川家に集まった社員ばかり。
「どういうこと……?」
当主は誰に電話をかけたの?
誰を監視役として、シークレットムーンに遣わしたの?
当主の表情からは、思考を考え取れない。
その時あたしは、ひとりいないことに気づいた。
衣里と朱羽があたしを見、あたしは頷いた。
結城がいない。
結城は――。
最後に結城が入って来た。
結城だけではなかった。
結城が押して来たもの。
それは――。
あたし達は思わず立ち上がって、叫んだ。
「「「会長!」」」
絶対安静だったはずの月代会長が、車椅子に乗っていたのだ。
点滴をぶらさげながら。
そして結城に言うと車椅子は止まり、そして会長は結城に掴まるようにして立ち上がった。
あたしは思わず駆けた。
礼儀も作法もへったくれもない。
あたしの会長が、ここに来てくれたのだ。
朱羽のために。
あたし達のために。
朱羽も椅子を投げるようにして走って来た。
衣里も、着物をはだけさせながら走って来た。
会長はわかっているというように頷いて、あたし達を抱きしめるように両手を広げた。
28にもなっていてと、ひとは言うかもしれない。
だけどあたし達の親であり、あたし達の恩人なのだ。
あたし達の歴史に、月代雅は不可欠な存在なのだ。
その彼が、病床の身でありながら、来てくれた。
大丈夫だと、そんな安心感が芽生えて泣きたくなる。
会長は、あたし達を抱きしめたままの格好で当主に挨拶をした。
「この格好で失礼します。……お久しぶりです、忍月のご当主。そして真下のご当主と夫人」