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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
衣里の両親はわかる。
だけど忍月の当主に、お久しぶりって……。
「会長! 忍月のご当主をご存知だったんですか!?」
「はは。俺は忍月コーポレーションにいたんだ。何度かは話くらいはしたさ。さらに言えば、俺を忍月にいれてくれたのは、香月と渉の父親だ」
「え?」
朱羽と同時に専務からも声が聞こえた気がした。
「忍月のシステム開発部の必要性を説いて、実際立ち上げて俺を抜擢してくれたのは、亡き次期当主だ。俺が渉を可愛がったように、俺も……可愛がって貰ったんだよ。さほど年の差はなかったけれど」
あたし達は絶句した。
そんな話、一度たりとも聞いたことはなかった。
それは専務も同じだったみたいだ。
「なんで黙っていたんですか、俺……」
「あえて言うほどのものでもないだろう。俺は別に、あのひとの子供だからと目にかけたわけではない。お前の出生がわかった時に、知っただけのこと」
「会長が、監視役だったんですか?」
すると会長は笑う。
「いや……。ご当主、うちの専務に声をかけてましたね」
シークレットムーンの専務と言うと、逃げ回っていたのを捕まえて、株主総会の招集をかけさせたひとのことである。
え!? あの、別にいなくてもまるで困らないひとが監視役!?
っていうか、朱羽と関わっていないくせに監視もなにも!
「そうだ。ワシは奴に電話をした。それなのに、なぜ奴が来ない」
「それは早々に彼は、ここにいるシークレットムーン社長である結城に、それを譲ったからです。お電話を頂いて、結城に泣きついてきたそうです」
ということは……。
「結城が監視役!? よりによって結城が!? 朱羽を監視してたの!?」
あたしの口から悲鳴のような声が出た。
「いや、違うんだ。俺も、専務から電話が来るまですっかり忘れていてさ」
「いつから!!」
「それは香月が来た日だったはず。専務に呼ばれて……」
あたしは思い出す。
朱羽がシークレットムーンに来た日。
木島くんに怒って一息ついて休憩室に行ったあたしは、結城と会った。
確か専務室から出てきたとか言っていた。
それで朱羽が来ることを、結城は知っていた。