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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「専務も新しく来る奴の監視を変わってくれ、だけだったし、香月が忍月財閥の跡取りとか情報一切くれなかったんだ。だから俺もすっかり記憶の彼方」
結城は肩を竦め、あたしは脱力した。
衣里は、"この筋肉馬鹿"とでも言いたげだ。
「でも、結城……証拠。専務が結城に監視役を移譲したという証拠がないと、専務が来ないと棄権になっちゃうんじゃ……」
「そこらへんは抜かりねぇよ」
結城は背広から封筒を取り出し、当主に挨拶をした。
「これは専務の委任状です、当主」
にっと笑う。
「お、お前は……」
ホテルの制服ではなかったために、今まで気づかなかったらしい。
「はい。俺はシークレットムーンの社長になりました、結城睦月と言います」
あたし達は、ふらつく会長を車椅子に乗せて結城を見つめた。
「先日、あなたと仕事についてお話させて頂きました。その時、俺はあなたに、俺を支えてくれる友達と仲間の話をした。あなたは俺にこう言った」
――君のように、心が通い合える友達や仲間が傍にいるということはとてもよいことだ。会社はひとりではできん。この年になると、自分の意志を受け継ぐ者が欲しくての。
「俺にとって心が通い合える友達というのが、香月です。ここの鹿沼です。ここの真下です。そして後ろに控える俺の社員達です」
「な、なぜホテルの従業員だと嘘をついた……」
「建前ではなく、きちんと中身を見て欲しかったからです。あなたは俺の客ではなく、友達のおじいさんなだけだ。あの日、ホテルであなたに近づけるのは、従業員でしかなかったんです。騙していたことはすみませんでした」
結城は深々と頭を下げた。
「ただ、俺が何者か知らず、俺がどれだけ友達と仲間を愛し、そして愛されて、会社を立て直して大きくしたいのか、俺はあの時、あなたに正直に話しました。そしてあなたからもアドバイスを頂きました」
――そういう君を慕い、君が慕える人間は貴重だ。死ぬまで離すなよ。
「香月がうちの会社に必要です。香月と共に、月代が作った会社をもっと盛り立てたいんです。あなたが財閥を大切にしたいと思うように、俺も父から譲り受けたシークレットムーンを守りたいんです。そのために、香月の力が必要なんです。香月は、絶対失いたくない、俺達の仲間なんです!」