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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「そんな二大旧家の力だけではなく、取引先を力にした結城社長、まだまだコネが沢山ある月代会長が、朱羽についている」
専務の隣に朱羽が立つ。
「渉さんには向島がついてます。……ねぇ、お義母さん。あなたは力を気にしますけれど、あなたの後ろには誰がいるんですか?」
美幸夫人の視線の先には、厳しい顔をした当主。
「あなたはまた裏から手を回し、フェア精神を穢した。その報いは本家にて……、陽菜の探し出したものをお待ち下さい」
朱羽の眼鏡のレンズがキランと光った。
朱羽と専務がこうして美幸夫人を責めているところは、初めて見たようなものだ。
彼らは追い出す気なのだろうか、当然の報いとして。
だけどその前に、美幸夫人とお話をしたいの。
当主が理解してくれるかと聞いてきたから、あたしもまた、拒絶ではなく妥協点を見つけないといけない。
追い出すのは簡単だ。
だけど、誰ひとりとして美幸夫人を恐れ、その正直な心を聞いていないのであれば、あたしくらい、聞いてみてもいいんじゃないだろうか。
彼女はなぜ、本家に居座っているのか。
どんな思いで、朱羽と専務の母親を殺したのか。
それが出来るほど、狂っているのか。
……嫌いだけどね。
「ではこれにて、閉会いたします」
専務の声と同時に、朱羽があたしに手を伸べた。
「一緒に、おいで?」
あたしはその手を取り、そして抱きついた。
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手を振るシークレットムーンの皆を背後にする。
名取川文乃も、衣里のご両親も後にする。
月代会長にも、頭を撫でて貰った。
この先はあたしひとりで戦わないといけない。
本家に向かうタクシーの中、後部座席に座るあたしと朱羽。
ふわりとした魅惑的な匂いを漂わせながら、朱羽の手があたしの身体に回り、顎を持ち上げるようにして、唇を重ねてくる。
恋しかった朱羽の唇。
……熱と激しさが加速する。
助手席の専務と運転手は見ないふりをしてくれていたが、会いたいのに会えなかったその反動は凄まじく、周囲が見えないあたしは、朱羽に抱きつくようにして情熱的なキスを繰り返した。
「今夜、部屋に来て」
「ん」
朱羽の匂いに包まれていながら、帰る時は朱羽も一緒だと心に誓った。